大手出版社が苦境に陥る中、宝島社は女性雑誌をヒットさせている。そのカギは商品やチャネルの意味を読み替える「視点転換」の巧みさにあると筆者は説く。

なぜ「書店チャネルは素晴らしい」のか

町中に書店がなくなって久しい。どこの商店街にも、2、3店はあったのではないだろうか。私が住んでいる高槻市の一番賑やかな商店街には、4軒の書店があった。しかし、何人かの店員さんを擁していた比較的大きい書店はすでになく、最近相次いで小規模の書店が消えた。費用が少なくて済む小規模書店でも経営が成り立たないのだろう。駅前の百貨店などに大手チェーンの2店のみという状態になっている。しかし、その大手書店チェーンも、決して経営は楽ではなく、経営統合が始まっている。若者の書籍離れに加えて、書籍通販に市場を奪われて、書店業は典型的な衰退業種になっている。

その中で、書店を新たなチャネルとし、女性雑誌をヒットさせている会社がある。宝島社である。同社は、雑誌の付録に有名ブランドのアイテムを付けて販売している。というより、私には、ブランドアイテムを売るために雑誌を発行しているように見える。「ブランドムック」と呼ばれる商品である。これが大ヒット。私は、ブルックスブラザーズ・ブランドのトートバッグをもっているが、しっかりして使いやすく重宝している。

この雑誌を企画した同社編集企画の桜田圭子さんに言わせると、書店チャネルは素晴らしいとのこと。あらためて考えれば、予定日を違えず商品がきちんと店頭に並んだり、定価で販売できるようになっていたり、販売チャネルとして重宝できる。同社の書店店頭での販促の一つを見せてもらうと、普通は書籍が並んでいるはずの店頭に、三面鏡化粧台が並んでいた。美容器具をブランドアイテムとするムックの販促である。

宝島社は大手出版社が苦境に陥る中で成長しているが、そのカギはブランドムックをはじめとした商品やチャネルの意味を読み替える「視点転換」の巧みさにある。今回は、この視点転換による成長の可能性を、栗木契・水越康介・吉田満梨/編『マーケティング・リフレーミング』(有斐閣、2012年)を参照しながら考えてみよう。

同書では、8つのケースが紹介されている。その一つが〈はとバス〉である。東京近郊を観光巡りする観光バスの会社である。1948年、戦後すぐの時期に、都内定期観光バス会社として設立された同社は、「地方から東京へ出てきた観光客」相手に、1日あるいは半日、観光バスで東京の名所旧跡を案内する「都内定期観光バスビジネス」として人気を得てきた。

しかし、このところ定期観光バスの需要は沈滞している。同社も99年から04年の5年間で需要は20%も減った。もう少し古い資料を調べると、衰退傾向ははっきりする。〈はとバス〉の利用者は、64年には123万人であったものが、05年には53万人と、半分以下に落ちているのだ。