「オラ、ついに勝ったゾォ~」
アニメや映画になった人気漫画『クレヨンしんちゃん』(以下、しんちゃん)を発行する双葉社は、中国で係争していた「しんちゃん」の著作権侵害訴訟について、上海市第一中級人民法院(地裁)で勝訴し、双葉社側の主張が支持されたとして4月中旬、これを発表した。
日本企業の商標が中国企業によって勝手に登録された代表的事件として有名になったのがこの「しんちゃん」事件。日中の法曹界だけでなく、ビジネス界においても注目されてきた同事件の判決内容は、どのようなものだったのか。
判決内容を見ると、著作権侵害訴訟については、「しんちゃん」こと「蝋筆小新(ラビシャウシン)」(しんちゃんの中国語表記)の漫画イメージ(イラスト)は、原作者によって完成された創作であり、そのキャラクターイメージ、顔の表情等は著作権法で保護されるべき芸術作品であるとしている。
同じく「蝋筆小新」も文字書体にデザイン処理を施して創作されたもので、著作権法で保護されるべき芸術作品であるとしている(イラスト右上の文字)。これによって被告(中国企業)は著作権者(双葉社)の専用権を無断で行使しており、その行為は著作権侵害であるとして、被告に、原告(双葉社)の経済的損失25万元(約330万円)と原告が侵害停止のために支払った費用5万元(約66万円)の支払いを命じた。
また、双葉社が2005年に中国の商標評審委員会(TRAB)に提訴した中国企業が登録した商標(しんちゃんの図形で眼鏡、アパレルなど5分類、「蝋筆小新」の文字デザインで4分類)の商標権無効審判請求についても、いったんは「5年の除斥期間を経過している」という理由で登録維持の審決が下されたものの、双葉社が行政訴訟を提起。同社の主張が認められ、係争商標は不正手段により取得された商標だとして無効になった。
これらの2つの判決に対して双葉社は、「『しんちゃん』の著作権が中国の司法、行政に認められ、一定の成果を得ることができた。真の権利者の権利はようやく保護された。「しんちゃん」のイラスト、タイトル文字が中国の著作権法で保護されるべき芸術作品だと判断され、大変有意義な判決だと受け止めている。行政訴訟についても、画期的な判決だと評価している」とコメント。
同社広報担当者も「正規版でないタイトル文字などはまだ中国に相当残っているが、不正な図形に関してはほぼ駆逐することができた。今回の勝訴が今後、日本企業の中国での知的財産権問題において、画期的な突破口になればよいと思っている」と話している。