王室の身辺警護レベルは4段階に分けられる

王室や公人の身辺警護レベルは、合同テロ分析センターが、機密情報を共有する枠組みである「ファイブアイズ」に加盟する英国、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの各情報機関からの情報を分析した脅威評価に基づきRAVECが個別に決定する。RAVECのメンバーには内務省、警察、王室などの代表が名を連ねる。ローゼンバーグ氏によると、RAVECは警護対象を以下の4つのカテゴリーに分けている。

(1)リスクや脅威の有無にかかわらず、その地位にあるため保護される要人。エリザベス女王、チャールズ皇太子(新国王)、首相は確実に含まれるとみられるが、ウィリアム王子(王位継承順位2位)がカテゴリー1かどうかは分からない。
(2)RAVECが「襲撃の可能性と、襲撃が成功した場合の影響に関するリスク評価に対する適切な対応」と判断したため保護される要人。ヘンリー公爵は20年3月末までこのカテゴリーに入れられていた。
(3)ケースバイケースで保護される要人。ヘンリー公爵は王室離脱後、このカテゴリーに移されたとみられている。
(4)判事の判断で機密扱いとされるカテゴリー。この中には他の保護手段が与えられているにもかかわらず、身辺警護が行われない要人も含まれている。

王族にはパートタイムは認められない

「現役王族」にパートタイムは認められないというのが英王室の公式見解だ。ローゼンバーグ氏によると、ヘンリー公爵は20年2月に「現役王族」ではなくなったことから、同月末、RAVECの委員長が「ヘンリー公爵とメーガン夫人は公務を返上したため、4つのカテゴリーのどれにも容易に当てはまらない」とエリザベス女王の私設秘書に書き送った。

3月末を期限に警察の身辺警護は打ち切られ、2人は米国に移り住んだ。昨年6月、ヘンリー公爵が亡き母ダイアナ元皇太子妃の銅像の除幕式に出席するため英国に帰国した際の警護がヘンリー公爵には気に食わなかったようだ。結婚に際し君主の承諾が必要な王位継承順位6位以内の王族なのにこれまでと同じ警護が与えられないのは不当というのが彼の言い分だ。

しかし公務を放棄した人に血税でフルの身辺警護をつけることに同意する納税者がどれだけいるのだろうか。また、英王室の公務と身辺警護の関係はどうなっているのだろうか。英大衆紙デーリー・メールによると、エリザベス女王をはじめ主な王族が昨年果たした公務の件数は次の通りだ。コロナによる接触制限でバーチャル形式での公務が多くなっている。

主な王族が2021年にこなした公務件数
出所=「MailOnline」をもとに筆者作成