中国との価格競争は「してはいけない競争」だった

日本の家電製品が世界市場で競争力を低下させていった背景には、もちろん中国をはじめとする新興工業国の製品との価格競争もあった。しかし、その競争は「してはいけない競争」ではなかったか。日本で非正規雇用の労働者が急増した背景には、間違いなく、この価格競争が存在している。

小林邦宏『鉄道ビジネスから世界を読む』(インターナショナル新書)
小林邦宏『鉄道ビジネスから世界を読む』(インターナショナル新書)

価格競争で日本が中国に敗れるというのは、アフリカにおける鉄道開発の受注争いと同じだ。そして、価格面の不利を補うために日本側が採用する戦略も同じで、「付加価値をつける」というものだ。この付加価値を考えようとして、日本人は往々にして誤り、テクノロジーを「はぁ?」と思うような方向へ発展させてしまうのだろう。

テクノロジーを正しい方向に向けることができれば、価格競争に巻き込まれることのない価値を持った商品を開発することができる。たとえば「デロンギ」などに代表されるイタリアの一部のコーヒーメーカーは、価格とは関係なしの価値を認められ、世界中のコーヒーファンに愛用されている。コーヒーメーカーに求められるテクノロジーも結局は「美味いコーヒーをいれる」という一点が核心で、高い技術力をそこに集約できれば、競争力のある商品を生むことができるのだ。

本当に求められる技術を考える

日本では一般的に「汎用性のある技術」が高い評価を得る傾向にあったと思うが、現在の世界市場で生き残るために必要な技術は「唯一無二の価値を生む技術」なのだ。「白物家電」などといったカテゴライズで考えるのではなく冷蔵庫なら冷蔵庫で、洗濯機なら洗濯機で、本当に求められる技術はなにかを、もう一度、検討するべきではないかと思う。

よく冷える冷蔵庫、汚れがよく落ちる洗濯機……そういえば「吸引力の落ちない掃除機」はヒット商品になったではないか。それを開発する技術力が日本になかったとは思えない。やはり、テクノロジーを向ける先を正確にフォーカスできていなかった。

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