(PANA=写真)

シャープ社長 奥田隆司(おくだ・たかし)
1953年生まれ。名古屋工業大学大学院修士課程修了。78年シャープに入社。取締役などを経て2011年に常務執行役員。12年4月1日付で社長に昇格。


 

「商品市況の悪化にタイムリーに対応できなかった。申し訳ない」。3月半ばの社長交代会見でシャープの片山幹雄社長(当時)は頭を下げた。円高の進行や韓国メーカーとの価格競争激化で、主力の液晶パネル事業は大幅に収益が悪化。2月には2012年3月期の連結純損益が過去最悪の2900億円の赤字に転落すると発表。片山氏は代表権のない会長に就き町田勝彦会長も相談役に退いた。2トップに代わり、経営の立て直しを任されるのが奥田隆司氏(58歳)。4月1日付で社長に昇格した。

社内では「奥田氏はダークホースだった」との声が多い。それもそのはず。07年に社長に就任した片山氏はまだ54歳。「社長就任時、名実共にシャープのプリンスと見なされていた。10年は社長交代がないとの見方が一般的だった」(シャープ関係者)。だが環境の激変が長期政権を許さなかった。5年前に15万円程度で売られていた32型の液晶テレビは、今や店頭で3万円を切る商品も現れた。基幹部品から製品まで一貫生産する垂直統合のビジネスモデルは完全に崩壊した。今回の人事について「町田会長が片山氏に引導を渡し、片山氏は町田氏と刺し違えた」(家電メーカー幹部)との見方もある。

苦境に陥っているのはシャープだけではない。大手家電の業績は総崩れでソニー、パナソニックも社長交代で再起を図る。海外での生産や調達、他社との提携などを第一線で経験してきたことを買われ、社長に抜擢された奥田氏。3月末には構造改革の第1弾として、電子機器受託製造で世界首位の鴻海精密工業(台湾)と資本・業務提携を打ち出した。鴻海との提携を進め、韓国企業に対抗できる新たな事業モデルを構築できるか。奥田氏の真価が問われるのはこれからだ。