余談ですが、「AK47(エーケーフォーティーセブン)」という大麻の名称は、旧ソビエトの自動小銃「カラシニコフAK47」に由来するとされます。自動小銃の強烈な威力にあやかってネーミングされたと聞きますが、それだけ幻覚やリラックス効果が強い大麻ということでしょう。うまく名付けてはいるものの、よく考えれば恐ろしい名称です。

さらに下に記載された〈リキッドlong〉というのは、近年、アメリカなどから頻繁に密輸される、精製した大麻オイルの別称です。カートリッジに充填じゅうてんされて販売され、電子パイプ(ヴェポライザー)で吸煙するのが一般的です。これは効き目が強烈な上、大麻特有の匂いもほとんどなく、それこそ、隣で吸煙されても一般的な電子タバコと判別がつかない厄介な代物です。「long」とあるのは、ロングカートリッジを販売しているという意味でしょう。

急性中毒に陥るものも売られている

大麻オイルと似たものとして「ワックス」が挙げられます。皆さんも、自宅で鍋料理をする際や、キャンプでの調理に“簡易コンロ”を使うことがあると思います。そこで用いるカセットガスボンベに込められているのがブタンガスです。これを使用してTHCを濃縮したというものが「ワックス」と呼ばれます。「ワックス」は粘状で、精製度を上げれば蜂蜜色になるところから「ブタン・ハニー・オイル(BHO)」とも呼ばれます。

さらに、「エディブル(edible)マリファナ」と呼ばれる食用大麻もあり、チョコレートなどの中に高濃度のTHCが混ぜられている。このチョコ1枚をたいらげると急性中毒で意識混濁してしまうほど危険なものです。

また、投稿メッセージには〈罰〉という言葉もあります。これはMDMA錠剤のこと。2019年に著名な女優がこれを所持していたことで逮捕されたのは記憶に新しいところかと思います。

MDMAはエクスタシー、XTC、エックス、X、錠剤、タマ、モリー(粉末状でカプセル入りのもの)、バツ(Xをカタカナに読み替えて)、×(バツを記号に読み替えて)、罰(バツを漢字に読み替えて)などの隠語で呼ばれることが多く、ここでは「罰」が使われています。

また、MDMAにはさまざまなブランドのロゴマークが(もちろん、無許可で)刻印され、その名称で呼ばれることも珍しくありません。たとえば〈“三菱”入荷しました〉との投稿があれば、「(スリーダイヤ)」のロゴが刻印されたMDMAを販売していることになります。

ゲームのキャラクターが彫られることもあり、最近では「スーパーマリオ」シリーズに登場する人気キャラの「ワリオ」型のMDMAが出回っています。その横の〈ブルーベリー〉は先述したように、ブランド大麻のひとつ。そして、〈手押し〉は“手渡し”という意味で、地域を限定して配達・直取引が可能ということを示しています。

違法薬物の受け取りは郵送も可

大麻ではなく、「覚醒剤」の販売広告では、写真2のように、隠語の「アイス」が使われます。

【写真2】スクリーンショット
【写真2】(『スマホで薬物を買う子どもたち』より)

たとえば、〈グラム 35000円〉と書かれていれば「1グラムで3万5000円」、〈ハーフ 20000円〉なら「0.5グラムで2万円」を意味します。〈道具ハーフから1本サービス(2本目から1000円頂きます)〉の場合は、〈0.5グラム購入の方には注射器1本サービスします。2本目からは1本1000円で販売します〉ということです。

覚醒剤の注射使用には、医療機器であるプラスチック製の使い捨て1cc用の注射器が使われます。これが卸ルートのなかで横流しされ、覚醒剤と一緒に1本1000円前後で販売されている。

注射器を指す隠語は「道具」のほか、「ポンプ」や「p(ポンプのp)」といった隠語が使われます。〈都内、新宿中心〉などの地名は、〈配達(手押し)〉可能地域を指しています。〈郵送も可〉は読んで字の如しで、客に代金の振込口座を教えた後、入金を確認してから指定先にブツを郵送することもできるということです。

密売に用いられる口座は大半が借名口座(他人名義の口座)。郵便は局留めも可能で、宅配便の場合は営業所留めにも応じるはずです。