算数が得意な子に苦手が多い「恋愛感情」

もうひとつこんどは「⑥ラブラブスペシャル」を例にとってみましょう。

小学生くらいであれば、恋愛に疎い子もまだまだたくさんいます。とくに算数が得意な子は男女問わず、恋愛感情がわからないケースがなぜか多いのです。たとえば、桜蔭中学校に合格したある女の子は、「(ある人と)一緒に子どもを育てたい」と言う主人公は、その相手を好きだ、ということがわかっていないので驚いたことがあります。当然、比喩的な心理描写を読み解くことはさらに苦手です。

たとえば、物語文のなかで、主人公の「ある女の子」に対する次のような記述があるとします。

・その子がまぶしく見える。
・その子がキラキラして見える。
・その子がすきとおって見える。

こういった表現を読んでも、恋愛感情だということがピンとこない子も多いのです。

そこで、私の教室では、恋愛感情とはどういうものか、人を好きになったときに自分がどんな行動をしてしまうか、相手がどのように自分の眼にうつるのかをくわしく説明し、理解して確実に記憶するよう指導しています。

学校の廊下を話しながら歩く男子と女子生徒
写真=iStock.com/ferrantraite
※写真はイメージです

男女の恋愛とは、相手に好意を持ち、何かを分かち合いたいと願ったり、憧れの感情を抱いたり、心がときめいたりすることです。それが三角関係になると、そこに嫉妬ややきもちなどの感情が入っていきます。自分が相手にされなかったり、振られたり、失恋したりすれば、自分に足りないマイナスの部分を考えることになり、前述の「ビンボースペシャル」へつながることもあります。

知識として教わったこともやがて身になる

本当に、これらのことを知識として教えなければいけないのかと感じる親御さんもいるかもしれませんが、実際、こういった立場の違う他人の感情を学べないまま大人になってしまうケースは多いと思われます。いわゆる「デリカシーに欠ける」タイプの人は、他人の感情を理解しにくい人だといえるでしょう。

さらには、相手の立場や気持ちがわからないということは人権意識の欠如や男女差別にもつながり、パワハラやセクハラ、マタハラなどのトラブルを起こしかねません。

最初は技術として人の感情を学んでも、それらはいつか身になります。知識として教わったことが、子どもたちのこれからの経験のなかで実感され、心に響くこともあるでしょうし、実感は伴わなくても「そう感じる人もいるんだな」と理解することで、相手を尊重することができるようになるのではないでしょうか。