審判に文句をつけていたら試合が進まない

公認野球規則8.02
(a)打球がフェアかファウルか、投球がストライクかボールか、あるいは走者がアウトかセーフかという裁定に限らず、審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチまたは控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。

だからこそ、審判員には強い権限が与えられている。審判の裁定を逐一必要とする仕組みである以上、そのジャッジにいちいち異議を唱えていたら、試合の進行に差し支える。見た目でどちらとも言えないような微妙なプレーだったら、どうせ揉める。それなら第三者に決めてもらって試合を進行していこうというのが野球のルールの考え方なのだ。もし審判の下した裁定に納得できなかったら、プレーヤーのほうが試合から出て行くしかない。

公認野球規則8.01
(d)審判員は、プレーヤー、コーチ、監督または控えのプレーヤーが裁定に異議を唱えたり、スポーツマンらしくない言動をとった場合には、その出場資格を奪って、試合から除く権限を持つ。

実際の試合では、異議をまったく受け付けないわけではなく、とりあえず話は聞く。それで審判員が説明を尽くしても「納得いかない」と言って頑張るようなら仕方なく退場を宣告することになる。試合進行の妨げになるからだ。また、暴言や暴力行為があった場合も、審判としては不本意ながらご退場願うことになる。全ては試合進行を司る主宰者としての役割である。

野球審判員
写真=iStock.com/Matt_Brown
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原初のベースボールにも審判の規則が2つあった

ベースボールの起源には諸説あるが、それまでラウンダーズとかタウンボールとか呼ばれていた遊びを、ニューヨークのアレキサンダー・カートライトが1845年にルールを整備して、自分自身でチームを組織したのが始まりとされている。そのチームが「ニッカーボッカーズ」であり、その原初のルールを「ニッカーボッカールール」と呼んでいる。プレーに関する規則は全部で20条しかない簡素なものだが、そのうちの2つが審判員についての規定である。

ニッカーボッカールール
第2条 メンバーが集合したとき会長は審判を指名する。審判は試合を記録用のノートに記録し、この規則に違反したすべての行為を書き留める。
第17条 試合に関する紛争や異議は、すべて審判が裁定する。抗議は認められない。
(日本語訳は野球体育博物館による)

審判の裁定に対する抗議を認めない規定は現在でも変わらないが、原初のルールからそんなことが規定されている事実に驚かされる。つまり、ラウンダーズやタウンボールでもそれだけ揉めごとが絶えなかったのだろう。