それでも雇い入れてもらうために、教授が放った一言

【ルーベンシュタイン】あなたの法学教授のひとりであるジェラルド・ガンター教授は、エドモンド・パルミエリ裁判官にかけあい、司法書記官として雇い入れてくれるようお願いしました。裁判官にとって、それは簡単なことでしたか?

【ギンズバーグ】裁判官は女性を雇用することに抵抗はありませんでした。これまでも書記官として女性を雇ったことがあったからです。それでも彼は、私が母親だということを心配していました。ニューヨークの南部地区にある裁判所はどこも忙しく、日曜日でも書記官が必要な場合があり、そういうとき、私に働いてもらえないようでは困ってしまうからです。

私が知ったのは数年後で、その当時は知らなかったのですが、ガンター教授はパルミエリ裁判官にこう話をしていたのだそうです。

「彼女にチャンスをあげてやってください。もし彼女が期待に添わなければ、彼女のクラスにダウンタウンの会社に行く男子学生がいますから、彼が代わりに出向きますよ」

それは一見、飴のようなものでしたが、実は鞭も含まれていました。つまり「あなたが彼女にチャンスを与えなければ、今後はコロンビアの学生は一切推薦しません」という意味でもあったのです。

男性の裁判官
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スタンフォードの才女が4カ月間無給で働いたワケ

【ギンズバーグ】私ほどの年齢と境遇の女性にとって、このような待遇こそごく当たり前のことで、まず仕事をもらうまでがとにかく大変でした。

サンドラ・デイ・オコナー判事が、どうやって最初に仕事をもらうことができたか、ご存じですか? 彼女はスタンフォード・ロースクールでも非常に優秀な学生でしたが、正式な仕事のオファーはひとつもありませんでした。

そこで彼女は郡検事を4カ月間無給で働こうと提案し、こう付け加えたそうです。

「4カ月経ったとき、私にそれだけの価値があると思えば、給与の支払い対象者にしてください」

そしてもちろん、4カ月後にはそれだけの価値があると認められたのです。

うまくきっかけをつかんで大きなハードルを乗り越え、最初のチャンスをつかむことができました。女性も機会さえ与えられれば、少なくとも男性と同じように取り組めますから、次に仕事を得ようとするときには、ハードルは幾分下がります。

【ルーベンシュタイン】法務職員を務めたあと、最終的にラトガーズ大学の法学教授という職を得ますね?

【ギンズバーグ】はい、コロンビア大学ロースクール国際手続きプロジェクトに携わっていたときに、ラトガーズから声をかけていただきました。