野党の国会活動を全否定する山本氏の国会での言動

注目されないことへの焦りだったのだろうか。れいわは国会での「悪目立ち」や、対立する与野党の間でさえも共通認識が持てるようなことへの「逆張り」を、積極的に図るようになった。例えば2月22日に行われた、2022年度予算案の衆院本会議での採決において、山本氏は壇上で「これっぽっちの予算案で困っている人たちを救えるか」と不規則発言して物議をかもした。

驚いたのは3月の「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」に、れいわのみが反対したことだ。すでに多くの批判が出ているので繰り返さないが、筆者が特にがっかりしたのは、声明で決議について「言葉だけの『やってる感』を演出する決議」「形式だけの決議は必要ない。意味がない」などと述べたことだ。

こうなると、ウクライナ侵略に対する姿勢という問題だけではない。例えば、国会の少数派であるがゆえに政府提案の法案の成立を阻止できない野党の国会活動などは、すべて「やってる感の演出」「形だけで意味がない」ことになってしまう。政府・与党側から大量に喧伝されている「野党は批判ばかり」とほとんど同義のことを、当の野党議員が堂々と口にしたことになる。

筆者は心底気持ちが萎えてしまった。

政治ニュースがメディアに「消費」されている

山本氏は、自らに注目が集まらず、目立つ行動が逆に大きな批判を受ける、という現在の状況に嫌気が差したのではないか。それで、せっかく手にした議席を簡単に捨てて、街頭で自らの強固な支持者だけを前にした居心地の良い言論空間に身を置いているのではないか。

囲み取材を受ける政治家
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山本氏のくら替え出馬は妙な余波も生んだ。NHK党の立花孝志党首は4月28日、山本氏と同姓同名の「山本太郎」氏を、参院選の比例代表で擁立すると発表した。実現はしなかったが、一時は東京選挙区でも別の「山本太郎」氏を擁立する可能性、といったことまで報じられた。

筆者が悔しいのは、こんなことばかりが政治ニュースとしてメディアに面白がられ「消費」されていることだ。このような事態をいつまで放置し続けるのだろうか。