ラクに体重を減らせるとして「糖質制限ダイエット」が注目を集めている。コンビニなどでも「糖質」を表記する商品が目立つ。サイエンスライターの佐藤成美さんは「たしかに糖質制限をすれば体重を減らせるが、筋肉量の減少や脱水症状を引き起こすリスクがある。長期にわたって過度な糖質制限を続ければ、死亡リスクが高まるとの報告もある」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、佐藤成美『本当に役立つ栄養学 肥満、病気、老化予防のカギとなる食べものの科学』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

ドーナツとリンゴ
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油っぽい食べものはダイエットの敵なのか

さて、三大栄養素の糖質、脂質、タンパク質について、複合的に考えてみたいと思います。エネルギー源となるこれらの栄養素の熱量は、タンパク質や糖質では1gあたり4kcalなのですが、脂質は9kcalと倍以上にもなります。

脂質のこの性質は生体内にエネルギーを蓄えるためには重要です。ただ、油といえば、連鎖的に太るとイメージされます。油や油を多く含む食べものはもっぱらダイエットの敵とされてきました。このようなイメージが染みついているのは、脂質のエネルギーが高いからなのでしょうか。

生物には、飢餓に備えて余ったエネルギーを脂肪の形でためておいて、飢餓の状態になったときそれを使って生き延びるしくみがあります。エネルギー源になるのなら、ためておくのはタンパク質だって、糖質だっていいのですが、脂質は、同じ重さあたりのエネルギーが倍以上なのでとても効率がいいのです。そのため糖質やタンパク質も余れば脂質に変換され蓄えることができます。このしくみがあるために、脂質ばかりでなく、何を食べても食べすぎれば太るということになるのです。

さて、脂質は皮下組織や内臓のまわりにある脂肪組織に蓄えられます。脂肪組織は体温の保持や体の保護にも重要です。脂肪組織には脂肪細胞という脂肪をためておくための特殊な細胞があり、細胞質に脂肪滴という脂肪のかたまりをもっているのが特徴です(図表1)。