予算案賛成で批判したばかりの国民民主と選挙協力する維新の矛盾

国民民主党の姿勢にも首をかしげるが、さらにわけが分からないのは日本維新の会だ。

維新は安倍・菅両氏が政権を降りて岸田政権が誕生するという自民党内の「疑似政権交代」(ポスト55年体制が定着した令和の時代に、こんな昭和のような自民党内政局をまだ見せられるとは思わなかった)に呼応して、政権から大きく距離を取り、岸田政権批判に転じていた。自らの「身を切る改革」とは逆方向の指向性を持つ政権だと察したのだろう。その意味において、維新の姿勢は正しい。

でも、だからこそ維新は、国民民主党が政府の予算案に賛成した時、そのすり寄りぶりを厳しく批判したのではなかったか。松井一郎代表は3月17日の記者会見で「与党と一緒に政策協議するなら、早く自民党に連立の申し入れをした方が分かりやすい」と述べ、国民民主党を突き放した。

その舌の根も乾かぬうちの選挙協力。松井氏は4月20日の記者会見で「政策が一致するグループと連携していきたい」「政策の一致なく『立憲共産党』のような野党談合は一切しない」と記者団に語ったが、ではこの1カ月で国民民主党の何が変わったのか、維新は何を根拠に国民民主党への評価を変えたのか、全く分からない。

曲がりなりにも市民連合を介して共通政策への合意を取り付けた立憲民主党と共産党などと比べても、「談合」の度合いは国民民主党と維新の方がずっと大きい。そう言われても仕方がないのではないか。

野党間の小競り合いは野党全体を沈没させるだけ

今回の相互推薦は、両党の選挙戦術上も微妙だと思う。

例えば国民民主党にとって、維新の公認候補予定者を推薦することは、本当に党勢拡大につながるのだろうか。支持団体の連合京都はすでに、立憲民主党の福山哲郎前幹事長の推薦を決めている。京都の連合系地方議員は対応に苦慮するのではないか。5年前の「希望の党騒動」の京都版が起きる可能性も否定できない。選挙結果次第では、国民民主党と連合との間に埋めがたい亀裂が入る可能性もある。

逆に維新は、国民民主党が推薦する無所属候補の応援が、本当に党の利益になるのだろうか。

維新はこれまで、他の野党と自らの間に一線を引いて孤高を演出してきた。「与党も野党も批判する」ことで「しがらみのなさ」を訴え、支持を得てきた。にもかかわらず、自らが口を極めて罵ってきた労働組合を支持基盤に持つ国民民主党と組むことを、支持者はどう受け止めるだろうか。

また、京都と違い、静岡では連合静岡が、国民民主党系の現職の推薦を決めている。維新は今後、与党にすり寄る国民民主党を批判してきたことに加え、労組と選挙協力を行うことについても、これまでの姿勢との整合性を問われることになるだろう。

維新の松井一郎代表は27日になって、国民民主党との選挙協力について合意を白紙に戻す可能性に言及したが「何を今さら」という印象しかない。

もうここまで来たらいっそのこと、どの党が自民党と対峙する野党の盟主なのかがはっきりするまで、徹底的に小競り合いでも何でもすれば良いのではないかという気もしてくるが、その小競り合いが結果として、野党全体を沈没させてしまう可能性に誰も思いが至らないのだとしたら、実に残念なことである。

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