企業が欲する美大・芸大生人材の特徴

では、美大・芸大生が持つ、企業が欲する人材の特徴とは何なのか。

『プレジデントFamily2022春号』
『プレジデントFamily2022春号』

「企業は美大・芸大生に演奏や絵画といった才能を求めているわけではありません。彼らの魅力は主体性と実行力です。芸術系大学のカリキュラムでは、鑑賞者のニーズを考えたり、伝えたいメッセージを分析的に見定めたりする姿勢や、制作やプレゼンにおいて厳しい目を持った審査員に効果的な訴求を行う手法を学ぶことになります。

また、制作を計画し実現するためには、教科書の内容を追うばかりでなく、自ら課題を見つけ出し、その解決策を模索する“デザイン思考”が必要になります。こうした思考法は座学だけでは身に付きづらく、美大・芸大生の強みと言えるでしょう」

採用側は、こうした学生時代の経験が、新ビジネスへの発想につながることを期待しているという。

「美大・芸大生の人材としての魅力には、光が当たり始めたばかり。採用したいという企業はこれから増えていくのではないでしょうか」

古い採用方式ではビジネスを創造できない

「ビジネス環境の変化が激しくなり、“この業界ではこれが絶対正しい”という前提が簡単に変わったり崩れたりする時代になってきました。こうしたなかで、新しいビジネスを創造し、育てていくには、人材の多様性が必要不可欠だと考えています」

そう口にするのは、三井不動産の人事部人材開発グループ、川瀬敦雄さんだ。同社は数年前から、意識的に人材の多様性を重視するようになったという。

「以前は弊社を受験するのは、文系・理系学部出身者が中心でした。しかし、最近はそれ以外の人材にも目を向けて採用しようと試みています。新卒でも中途でも“肩書ではなく、頑張ったことと、そこに至るプロセスを見て判断する”という方針です」