日経平均2万7000円台に急落…「岸田ショック」の背景

そしてもう一つは岸田政権がマーケットから好かれていないことが、株価下落をもたらしているということだ。岸田政権発足以来の月足チャートがきわめて悪いのが、その証左といえる。

岸田政権が自社株買いを制限しようとしたり、金融所得増税をしようとしたのを見て、彼は、あまりマーケットフレンドリーな政治リーダーではないと、市場は判断したのだろう。それが日本株の動きに反映している。

市場が岸田首相を嫌っているのは、日経平均に如実に表れている。前首相の菅氏が退陣を表明、総裁選が行われることが決まったとき、日経平均は高値を付けた。下げ出したのは、総裁選前に最有力候補と見なされた岸田氏が金融所得増税を導入する構想を示してからだった。

市場のあまりに悪い反応に岸田氏は、発言を慌てて撤回、「いま直ちに金融所得増税をするわけではない」と二枚舌を使ったことから、市場の信頼をおおいに損ねてしまった。

以降、菅前首相が辞任発表の日に付けた日経平均の高値には戻らなかった。「結局、岸田首相は金融所得増税を導入するのではないか」とするマーケットの疑心暗鬼は収まらず、岸田首相はまたも前言を翻した。

さらには「自社株買いに制限をかける」と発言し、再び日経平均を下げてしまった。こうした経緯は日経平均を月足で見ると、本当にわかりやすい。

菅前首相のときも大きな下向線は出ていたが、それはデルタ株絡みで、菅氏の発言そのものが下げ要因になったのではない。ところが岸田首相の場合、コロナの状況が良くなっているのに、日経平均が下がっているわけで、本来はおかしな話なのだ。

「年収の壁」子育て給付で深まる疑念

岸田首相は財務省に傾斜しているのではないか。市場としては、そんな印象を抱いてしまったのだろう。この首相の下では、株式投資を難しくしてしまうリスクがあるのではないかと。そうなるとますます、米国株に比べると日本株の魅力が薄れてしまうわけである。

円安にもかかわらず、日経平均が下がっているということは、ドルベースにおいてはさらに大きく下がっている。海外の投資家も岸田首相のことをかなり研究しているようだ。

聞くところでは、岸田政権は財務省のアドバイスをよく聞いているのか、どうも緊縮財政をやりそうな気配だと感じ取っている向きがかなり多い。

「子育て世帯への臨時特例給付金」の話もややこしかった。これについても、無駄にややこしくしているとしか思えないフシがあった。

18歳以下の子供のいる全世帯に10万円をそのまま配ればよかったのだ。そこに960万円という年収の壁を設けたりした。私は、子供に渡すお金なのだから、親の収入は関係ないはずで、矛盾していると思った次第である。このあたりも微妙に、岸田首相はマーケットフレンドリーではないと、市場に捉えられたのではないだろうか。

一時高値を付けた日経平均は10月初旬には2万7000円台半ばに急落し、「岸田ショック」と呼ばれた。下げ幅は11.3%に及んだ。新首相就任直後にショックを起こしたのだから、これはきわめて不名誉なことだと言わざるを得ないだろう。