厳しい経済環境が続くなか、いまこそ各地域が活力を高め、日本全体で底力を発揮しなければならないときだ。地域の活性化に挑んだ企業の成功事例研究や、日本の産業界を支える中堅・中小企業の経営戦略などを専門とする日本政策金融公庫総合研究所の上席主任研究員・海上泰生氏が、地域資源の活用や企業の立地戦略など、幅広い観点から提言する。

地域資源の有効活用へ プレーヤーたちの結束を

──今日、全国で多くの地域が経済の活性化を目指しています。実現への行動を起こすには、どんな条件が必要となるでしょうか。
海上泰生(うなかみ・やすお)
日本政策金融公庫 総合研究所 上席主任研究員
早稲田大学法学部卒業、中小企業信用保険公庫(現 日本政策金融公庫)入庫後、中小企業庁長官官房、通産省(当時)貿易局課長補佐、中小公庫総合研究所グループ長などを経て、現職。横浜市立大学国際総合科学部講師も務める。

海上 まず、地域経済の活性化のカギとなる主要プレーヤーを整理しておきましょう。まずは、何といっても企業です。そして自治体、大学や産業技術研究所、商工会議所、組合やNPOなどが考えられます。企業のなかには、地元企業もあれば、地域外の企業が連携相手として加わってくることもあるでしょう。そして、それを支える金融機関の存在も重要です。

こうした地域内のプレーヤーたちを、活性化に向けて強く推し進めるいくつかの大切な要素があります。なかでも、各地で共通して見られるのは、やはり地域経済に対する強い「危機感」です。この危機感からの反発力が起点となって、「地元を何とかしたい」という「思い」を共有することがファーストステップになります。

実際、地域活性化を果たした成功例を数多く分析しますと、取り組みの立ち上げ期には、「地域共通のコンセンサス」を形成する過程が必ず存在します。例えば、地域内にある中小企業各社が漠然と抱えていた問題意識が、やがて飽和点に達して発露し、本格的なコンセンサス形成に発展していったケースがあります。また、自治体など地域コミュニティが、地域の中小企業にコンセンサス形成のきっかけを与えるケースもあります。さらに、大企業の新規立地や、すでに地域に立地する大企業の業況の変化などがきっかけとなったケースも見られます。