本当に「強気」なのか

ピーチは2019年、ANA傘下のバニラエアと統合した。2020年には独立系として再就航したエアアジアジャパンが事業停止になった。バニラエアは成田空港、エアアジアは中部国際空港を拠点とする航空会社で、ピーチは継続利用の顧客を囲い込むためにも同社の路線も組み込むことになった。

「なんだ、統合や事業停止で路線数が増えただけではないか」という読者の声が聞こえてきそうだが、実際はそう単純なものではない。

これらの理由があったとしても、先の見えないコロナ禍で拡大基調を続けていくには大胆な経営判断があったと思える。筆者はピーチの経営企画部部長、福島志幸氏に「なぜピーチは強気なのか?」と尋ねてみた。

「大きくは2つの理由があります。1つ目はコロナ禍において国際線の運航ができずインバウンド需要がなくなり、この資源を国内線に振り向けました。2つ目は、地方創生です。コロナ禍において働き方が変わり、地方の役割は今まで以上に重要になっています。日本全国、津々浦々の隠れた魅力を引き出して大都市と結びつけることは、将来にわたっての弊社の大命題でもあると思っています」とのことだ。

コロナ禍明けの事業再拡大においてインバウンドが回復した時に搭乗客を日本国内へくまなく送客するのに国内線を拡充することが大事だという読みになったと言える。

那覇空港で出発準備中のピーチ機
筆者撮影
那覇空港で出発準備中のピーチ機

対外的な理由の他に社内の事情によるところがないのか聞いてみた。

「バニラエアと統合したタイミングがまさにコロナ禍始まる直前の2019年11月でした。成田空港を拠点としていた会社ですので、統合後に新規路線を整理するにあたってピーチが拠点とする関西空港で既に就航している目的地とつなぐことを優先してきました。これにより、全くの新規で就航する時に比べて拠点開設のコストを抑えることができます。また、社員の雇用を守ることからも新規開拓の必要性があると思いました」

統合で一気に事業拡大を想定したが、コロナ禍で方向転換を行った結果なのだ。

「LCCの常識外れ」新千歳―那覇の新規就航

筆者が、ピーチが強気であると断言するのは路線そのものにも表れている。「LCCの常識外れ」と言える、新千歳―那覇路線の新規開設が象徴的だ。