職場で男女差別が起きやすい場面とは

自衛隊組織の階層性の強さは、女性の能力発揮にどのような影響を及ぼしているのかを考えてみる価値がありそうです。最初に彼女たちの発言をまとめると、階級があるから男女差別が起きにくい、自分が上に立ったときにその階級の命令として受け止めてもらえる、というポジティブな意見に集約されます。

厳格な階級社会、それはつまり上下関係があって窮屈な面があるのではないかというのは私たちの思い込みで、階級があるからこそやりがいを感じられるし、いきいきと働けると話す女性が多かったのは想定外でした。

職場における女性差別は、例えば同じような年齢・能力の男女の部下がいたときに、上司が性別を理由として女性だけに厳しい指導をしなかったり、難しい業務を与えなかったりと、恣意的な判断が入り込むことによって生じることが多いのです。

同じ役割期待の部下がいたとき、性別にかかわらず適性や能力に応じて仕事を配分して育成すれば、女性差別は起こらないわけですが、ここに上司の個人的な想いやこれまでの経験を踏まえた判断などが入り込む余地があると、恣意性を排除できなくなっていきます。

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「女性であることを意識せずに仕事ができる」

自衛隊組織においても、完全に恣意性を排除することは難しいかもしれませんが、形式的には、それぞれの階級と職務内容に応じた役割期待に基づいて仕事が与えられていくという点で、性差別の意識が入りにくい構造になっているようです。

「階級がないと組織が動かないものだし、たぶん階級があるからこそ、私たちは女性であることを意識せずに仕事ができるのだと思います。幹部自衛官としての仕事のやりがいについて考えてみると、女性だから男性だからということではなく、階級に応じて仕事が与えられていると思います。例えば『1佐』としてのあなたに命じているのです、というのが通じる社会なのです。だからやりやすいところもあるだろうなと思っています」

これは、自分が上官になったときに、部下との関係においてもメリットとなっています。

「自衛隊のすごいところは、階級を尊重してくれるという点です。私が部隊に配属になったときは、一応幹部自衛官だったので、自分の下に准曹士の隊員がいて、先任の曹長の方がついてくれて、いろいろと教えてくれるんですね。当時の私にとってはお父さんぐらいの年齢の人が、当時20代の私に教えてくれました。

それは、やはり階級なんですよね。階級を尊重してくれるので、私のことを『小隊長』として扱ってくれるのです。ベテランの隊員の方が私を立ててくれるのを周りの隊員は見るわけですよね。そうするとみんなも小隊長、小隊長って呼んでくれましたし、指示にも従ってくれました」