「いままでとは違うスゴイこと」では会社は変えられない

しかし、「ベタな正義感」だけが放置され、全部他人のせいにしていがみあっているとどうなるでしょうか?

非常によくあるのは、なんだか話題の「ビジネス流行り言葉」とか、外国の事例を持ってきて、「隣にいるアイツ」を完全に否定したくなることです。たとえば、

「アメリカじゃこうなのに、ウチの会社の経営陣はほんとダメだね」
「うちの上司はアジェンダが明確じゃない会議ばかりで疲れる」
「主張があるんだったらエビデンスをそろえてからにしてほしいよ」
「部下たちが会社のパーパスを意識してくれなくて困る」
「部長の仕事の進め方は古すぎる。もっとDXを推進していかないと」
「この会社はSDGsに対する意識が低すぎる。もっと未来について真剣に考えないと」

といったことです。こういう争いが放置されていると、「その組織をよくするためでなく、ライバルのアイツを否定するために新しいプロジェクトが始まる」といったような本末転倒の極みのような状況になっていってしまう。

次々と浮かんでは消えていく「ビジネス流行り言葉」を本当に自分たちの会社に根付かせるには、その言葉が自分たちの会社にとってどういう意味があるのか? どう取り入れれば自分たちの会社にとって効果のある施策になるのかを真剣に考えなくてはいけません。

そのためには、ビジネス書や外部のコンサルタントの言うことだけでなく、「自分たちの会社の仲間」や「自分たちの顧客」が言っていることに自らしっかりと耳を傾けて、そこから情報を吸い上げて変えていくことが必要です。

「それエビデンスあるの?」からアイデアは生まれない

とはいえ、そういう「自分たちの仲間が言っている生の意見」をなんとか無視してやろうと、「それエビデンスあるの?」などと「論破」してしまう人もいるでしょう。

会議室で居眠りする会社員
写真=iStock.com/YinYang
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いまの日本でありがちな問題は、「ビジネス流行り言葉」を自社に応用するときに、自分たちの会社にとってどういう意味があるのか? どの点に集中して応用すれば自己満足でないプラスの効果を得られるのか? といった点を深く考えずに形だけマネしようとしてしまうことです。

ただ実は、そういう「ビジネス流行り言葉」を無理やり導入しようとした時に出てくる違和感の中には、その発想を本当にその会社だけの課題にブラッシュアップするためのヒントがあるはずです。

本当にその新しい労力をかけただけ顧客にとって「意味」を感じてもらえることなのか? 単に自己満足になっていないか? 削ってはいけない部分のコストを削ることになっていないか? 一時の売り上げのために顧客の信頼をドブに捨てるような行動になっていないか? その新しい業務をこなせるだけの人員配置や育成の算段は立てられているのか?

このように「抵抗勢力さんの言い分」には、どこにでもあるよくある話を「自分の会社だけのオリジナルな例」に転換するための大事なヒントがたくさん詰まっています。

そうやって対話の「最初の三歩」くらいまでに出てくる反対意見と真摯に向き合うことは、単に思考停止のまま流行り言葉をなぞってみるのとはまったく違います。こういった対話こそが、ちゃんと自分の会社の事情に向き合った「本当にオリジナルなアイデア」を生み出します。