公認会計士 秦 美佐子 はた・みさこ●早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業等、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。他に経営に活かせる会計をテーマにした『会計士マリの会社救出(秘)大作戦!』(すばる舎)などの著書がある。

「でも株主にとっては大迷惑だったんじゃないかな。集めたお金は震災対応ではなく、別のところに使われるはずだったんじゃないの? 『東京電力グループ中長期成長宣言2020ビジョン』に賛同したからお金を払い込んだのにね」

「ただ、そのビジョンには『電源の高効率化を含む低炭素化に向けた設備投資資金』が含まれているだろ。それって具体的には原発への投資のことを指しているんだ。震災で原子力分野への設備投資に歯止めがかかったとも言えるんだ」

「そうか、原子力開発のために集めたお金を原発事故で被害を受けた住民たちへの損害賠償に使うことになったんだ」

 

 

最終回では有価証券報告書を使って会社のキャッシュ・フローの状況や株式等の状況を見てきました。このように3回にわたって東京電力を例に有価証券報告書をみてきましたが、ポイントを絞って読むだけで会社の実態についてかなり詳しくなれることを実感して頂けましたでしょうか。これを機にぜひ気になる会社の有価証券報告書をチェックしてみてください。

※なお、ここでは引用した有価証券報告書の内容について、ポイントを目立たせるために一部に下線を施しました。