どうやら宿題をしてきたらしいさくらの言葉に佑真は満足げに目を細め、彼はキャッシュ・フローの指標を指さしながら分析を続けた。

「東電のキャッシュ・フローの状況をみて言えるのは、営業活動では毎年5,000億円以上のお金を継続的に稼いでいることだ。そのお金を投資に回していることも読み取れる。財務活動の増減は年によってまちまちだが、平成23年3月期には1.8兆円も増えているだろ。お金が2兆円も増えた主な原因はそれなんだ」

「財務活動って借入ということ?」

「借入や株主とのやりとりといった会社の資金調達に関連する事項を財務活動と言うんだ。では実際にキャッシュ・フロー計算書をみていこう。そうすれば平成23年3月期の財務活動によるキャッシュ・フローの具体的な内容がわかる」

佑真は「第5【経理の状況】1【連結財務諸表等】(1)【連結財務諸表】4.連結キャッシュ・フロー計算書」をクリックし、財務活動によるキャッシュ・フローを指した。

「ほんとだ。財務活動を見ると会社がどうやって資金調達しているのかがわかるわ。社債や借入、コマーシャル・ペーパー、株式の発行等が記載されているのね。ところでコマーシャル・ペーパーってなに?」

「短期の借入のようなものだよ。通常は銀行から借り入れをしたりするだろ。それを間接金融というんだけど、社債やコマーシャル・ペーパーは銀行を通さずに会社が直接債権者から資金を集めるから直接金融と呼ばれているんだ。コマーシャル・ペーパーは社債と違って短期で決済される」

「ふぅん、そうなんだ。そう言えば、直接金融って会社に信用力がある場合のみ実現可能って佑真が前に言っていたわね。普通の会社はやっぱり銀行に頼らざるを得ないわ」

「それで、東電の平成23年3月期の財務活動の増減内容をみると、一番影響が大きいのは長期借入による収入の2兆円だということがわかる。3,573億円の返済を考慮すると、純粋に1.7兆円の増加だ」

「すごい!それだけの大金よく借りられたわね」