買取制度のおかげで格安電気を販売できたが…

ただ、思えばこれまで新電力は、再エネの買取制度のおかげで市場に安く放出された再エネ電気の恩恵を受け、さらに、従来の電力会社の送電インフラにタダ乗りすることで格安電気を販売できた。そして、顧客のほうもそのおかげで安い電気代という特典に浴してきたわけだ。なのに、損をするとなると、後始末は国や自治体にお任せというのはちょっと勝手な気がする。電力、水、医療は自由化してはいけないというが、確かにこの制度には問題がありそうだ(日本もやはり同じような状況になりかねない)。

さて、そういう不穏な空気の漂っていた1月11日、ハーベック経済・気候保護相がこれまでの気候政策の総決算と、新政権の掲げる目標を発表した。すでに前メルケル政権の時代から意欲的だったCO2削減目標が、さらに前進したものだ。ただし、昨年と今年の削減目標はというと、未達成が確定している。

「原発200基分の太陽光発電を確保する」

ハーベック氏いわく、だからこそ今が正念場。新政府の挙げる新たな目標は、2030年までに総発電量に占める再エネの割合を80%にし、2045年までにカーボンニュートラルを達成すること。そのため、国土の2%を目安に風車を増設し(現在は国土の0.5%で、すでに3万本を超えた)、商業設備の新築建造物の屋根には太陽光パネルの設置を義務付ける。こうして太陽光発電の容量は、2030年までに現在のほぼ4倍である200GWに増やす。

200GWというのはおよそ原発200基分に相当するが、これはあくまでも容量であり、実際の発電量ではない。太陽光発電における設備利用率は、点検などで止めない限りフルに稼働できる原発や火力とは違い、ドイツでは年平均11%前後と壊滅的な低さだ(日本は約20%)。特に冬の日照時間が少ないし、雪が積もればパネルは機能しない。つまり、広大なソーラーパークは、いわば収穫の極端に悪い畑が茫々と広がっているに等しい。

ただし、お天気が良いと、それが突然100%近く発電してしまうから大変なことになる。電気が送電線に入り過ぎると停電の危険が高くなるので、危なくなると捨て値で(時にはお金をつけて)周辺国に流す。