努力は本当に報われるのか。精神科医の斎藤学さんは「『もっとがんばればなんとかなる』と思い込んでいるともっと苦しくなる。自分を責めるのをやめて、思い込みを疑ってみると、見えている景色はがらりと変わる」という――。

※本稿は、斎藤学『「毒親」って言うな!』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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「努力すればなんとかなる」という無責任なセリフ

私は、普段「それ言っちゃおしまいよ」と思うだろうことをたくさん言います。

例えば、「世の中は結局、親次第。親が裕福かどうか美貌の持ち主かどうかで、子どもの運命の8割は決まってしまうよね。その差を努力で埋めようとしても無理でしょう」などと言います。

意地悪な言い方だとは思いますが、理由があって言うのです。「努力すればなんとかなる」という無責任な、しかし耳触りのいいセリフを打ち消すためのフレーズなのです。これを言うことによって、努力の空回りの中にいる人を救おうというたくらみです。

そもそも、恵まれた環境に生まれた人を見ていると、それほど幸せそうでもない。みんなに期待をかけられるから、背負うものが大きすぎて大変そうです。しかも、日本では上流階級といってもタカがしれているし、階層が不安定ですから、ちょっと油断しているとすぐに没落してしまいます。

「努力が足りないからダメ」という考えをやめる

だから名門というと、いわゆる古典芸能の世界がわかりやすいのですが、幼少時から芸能を強いられるので、それはそれで大変。なぜそんなことを知っているのかというと、名家に生まれて、息抜きのしかたがわからないまま、ドラッグやアルコールの依存におちいった人々が私を訪ねてくるからです。彼らに比べれば、そこいらを気軽に歩けて、通りすがりに他人から声をかけられることもない生活のほうがずっと楽です。

「とりあえず、“努力が足りないからダメ”って考えるのをやめようよ。がんばればなんとかなるって本当? もう気づいているだろうけど、世の中は努力だけじゃないだろう? そこを努力でなんとかなると思うところが、きみの苦しさだよ」

努力を否定するわけではありません。「うまくいかないのは、まだまだ努力が足りないからだ」と思い込み、自分を責めてしまうのをやめさせるためです。