プロほど間違えやすい“ある考え”

われわれのやり方と同じように、という点では日本のコンビニ各社も同じです。例えばおにぎりなんかでも、ほかのコンビニでも「セブンで売れているんだから」と売り出すわけです。ちょっと見たところでは、どのお店も同じように見えるでしょう。

ただし、見た目が同じでも、お客様が選ぶとなると全然違う。

食べるものだったら、まず味です。セブン‐イレブンでは味の悪いものは絶対に販売しちゃいけない。そういういくつかの基本を徹底しています。

特に最初は相当こだわってやりました。おにぎり一つ作るといっても、妥協はなし。「日本でいちばんおいしいお米はどこにある?」「この米じゃ駄目だ。もっとおいしいものを」「この米にはどこの海苔がいちばん合うんだ?」と追及しました。

コンビニエンスストアでおにぎり
写真=iStock.com/Ljiljana Pavkov
※写真はイメージです

発売が決定していたある商品を、「これは販売できるレベルではない」と判断して、回収したこともあります。その商品が仮に店舗に並んで、買った人が「あまりおいしくないな」と感じたとする。

もちろんある程度の味だから、クレームが出るようなことはないと思います。だったら些細なことだと思うかもしれないけれど、それだけのことを理由に、セブン‐イレブンを選んでもらえなくなるかもしれないんです。

こうした基準を、プロほど間違いやすい。最大限の努力をして作ったものであれば、「そこそこ」の品質であっても、これでいいと思ってしまう。

信じるべきは自分の基準

それでは駄目です。信じるべきは自分の基準。自分がおいしいと思わないなら、売ってはいけない。そして、その基準がお客様と同じでなければいけない。だからこそ、お客様の立場で考える。ここだけは、絶対に外してはいけません。

セブン‐イレブンの1店舗当たりの1日の平均売上額は、ほかのコンビニチェーンと比べて、約15万円高くなっています(2020年度決算の比較)。隣に並んでいたとしても、売り上げが全然違う。この差は簡単には縮まらないと思います。

人間はないものねだりをする生き物

人間は、常に「新しいもの」や「良いもの」を求めます。

今回の東京オリンピックを見ていても、「こんなのがあったのか」というような、新しい競技をやっている。ルーツをひも解けば、もともとは子どもの遊びのようなものだったのかもしれませんね。それが競技ということになると、一生懸命努力する。見ているほうも熱中しますよね。

もっと言えば、100メートルを0.1秒速く走ったって、遅く走ったって、どうってことないじゃないですか。だけど、少しでも速い選手にみんなが憧れる。みんなそういうことを求めているんです。

商品やサービスも同じ。より新しいもの、より良いものが求められるようになります。

どんなものでも、いまあるものに対しては必ず飽きが来ます。

人間というものは、総じてないものねだりをする。それに対してわれわれは、「もっとおいしくしよう」「そのためにはどうしたらいいか」と挑戦するんです。