地味でモテないキャラが日本で解放感を味わう

さて、こうして「生きづらい」若者たちがたくさん描かれる中、2016年に放映されたこのドラマのシーズン5では、主要登場人物のひとりであるショシャンナという女性が急遽転勤を命じられ、東京で働くことになったシーンの描写があります。そのシーンをざっと拾ってみましょう。

まずはシーズン5の第3話「JAPAN」です。

地味でモテなくアメリカで生きづらいオタクキャラのショシャンナでしたが、移り住んだ東京で水を得た魚のようになり、自信満々に肩で風を切って出勤します。オフィスでは笑顔で朝の挨拶。日本人は皆、笑顔で挨拶を返してくれます。

会社帰りには同僚の日本人の女子たちと銭湯へ。湯船につかりながらのガールズトークで、ショシャンナが想いを寄せている上司・ヨシ(水嶋ヒロ)の話が出て周りから冷やかされますが、悪い気はしません。そこでショシャンナはこう言います。

「(日本に)来たばかりだけど、皆が家族みたいに感じるの。アメリカなんて恋しくない」

自宅PCのビデオ通話でアメリカ本社の同僚女性と話す時も、「この仕事環境、最高よ。毎日がまるで夢みたい。本当にもう最高。“問題から逃げるな”って人は言うけど、私は逃げて成功した。皆、間違ってる」とご満悦のショシャンナ。しかしその直後、アメリカの同僚から会社の業績悪化を理由に、彼女は突然クビを言い渡されてしまいます。

「ゆっくり人生を楽しむことを覚えたのね」

次に、同じくシーズン5の第5話「TOKYO LOVE STORY」です。

結局日本に残り、東京の猫カフェで働くショシャンナ。ある日、彼女に解雇を言い渡したアメリカ本社の同僚女性が店にやって来て彼女に謝罪します。しかしショシャンナは怒るでもなく、「本当に日本が気に入ってるの」。その言葉に驚く彼女を原宿の竹下通りに連れて行き、こう言います。

「日本人のいいところは、好きなものを全力で突き詰めてかわいくするところ。どこを見ても私が大好きなものばかり。自分が心の中で作り上げた国じゃないかって思える」

その後、ふたりは銭湯へ。同僚女性はショシャンナに感心して、しみじみこう口にします。

「あなた仕事に燃えてたのに、ゆっくり人生を楽しむことを覚えたのね」

穏やかで満ち足りた表情のショシャンナ。

「ええ、桜の開花と同じ。ゆっくり待つものよ」

同僚も「ほんと同感」とすっかり意気投合します。

桜が咲いている東京
写真=iStock.com/frentusha
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