東京パラリンピックで銀メダルを獲得した車いすバスケ日本代表。その中で最長のプレータイムを誇り、大会MVPにも選ばれたのが鳥海連志選手(22)だ。鳥海さんはどうやって「車いすバスケの天才」となったのか。フリーライターの川内イオさんが取材した――。
鳥海連志さん
写真提供=WOWOW
鳥海連志選手。東京パラリンピックの日本代表としてチームを「史上初の銀メダル」に導いた

パラアスリートを代表するスターになった鳥海選手の素顔

鳥海連志。ちょうかいれんし、と読む。東京パラリンピックが開幕するまで、この名前を知っている人はそれほど多くなかっただろう。

それが今では、メディアの引っ張りだこの日々。最近も、「第50回ベストドレッサー賞2021」のスポーツ部門で受賞し、12月2日の授賞式では著名人らと肩を並べて参列。同日夜には、テレビ番組『櫻井・有吉THE夜会』にも出演した。

彼を知らない人のために、おさらいする。鳥海は、車いすバスケットボールの日本代表として獅子奮迅の活躍を見せ、史上初の銀メダル獲得の原動力となった。その活躍ぶりは世界にもインパクトを与え、国際車いすバスケットボール連盟は「東京パラMVP」に鳥海を選出した。

まるで氷上を滑るように車いすを操作し、相手のディフェンスの間を縫うようにして鮮やかにシュートを決める。自陣のゴール下では、身体を張ってリバウンドを取る。勝負所で相手のボールをスティールし、流れを引き寄せる。

コート全域で縦横無尽にプレーする姿は、それまで車いすバスケットボールになじみのなかった人たちの心もつかんだ。大会前、1600人ほどだったインスタグラムのフォロワーは、5万人を超えた。

一躍、車いすバスケットボール、そしてパラアスリートを代表するスターとなった鳥海。しかし、決して浮かれてはいない。生粋の負けず嫌いの脳裏には、パラリンピック決勝で対戦したアメリカの、ある選手の姿が刻まれている。そして彼の視線は今、海の外に向けられているのだ。