ナイキは商品を売るだけでなく、アクションを啓蒙している

ゼロからシューズを作るよりも手間がかかるため、3万8500円という販売価格になったわけだが、それはナイキがランナーに寄り添おうとしている証拠だ。同社ランニング シニア フットウエア プロダクト ディレクターのレイチェル・ブル氏はネイチャー製作に関してこう語っている。

「最高のランニングシューズを作っても、走る地球の環境がなければ意味がありません。単にきれいなものを作るだけではなく、この製品を通してパフォーマンスとサステナビリティに関する私たちの思いを表現したいと思いました。サステナビリティの大事な要素は、まずは地球環境について考えること。ランナーも地球のことを考えているからです」

生産過程で発生する廃棄物や端材をテキスタイルのアッパーを作る3D印刷の工程に活用。そのため、アッパーは基本、新たなゴミは発生しない。
写真提供=ナイキ
生産過程で発生する廃棄物や端材をテキスタイルのアッパーを作る3D印刷の工程に活用。そのため、アッパーは基本、新たなゴミは発生しない。

今夏開催された東京五輪。酷暑のために、マラソンの舞台は東京から約800km北の札幌に変更された。女子は直前にスタート時間を1時間前倒しにしたが、出場106人中30人が途中棄権した。気温の上昇は地球規模で考えないといけない問題だ。

ネイチャーを登場させたのは、「地球温暖化を食い止めよう」というナイキのメッセージと言っていい。今後もさまざまなモデルでサステナブル商品を登場させる予定だ。

アディダス、アシックスも地球環境に配慮した商品作り

では、他のメーカーはどうか。アディダスは2015年から海岸や海沿いの地域で回収されたプラスチック廃棄物をアップサイクルして生まれた素材を未使用プラスチックの代わりに使用し、スニーカーを製造。2024年までにすべての製品を再生ポリエステルに移行するという大きなミッションを掲げている。

国内メーカーのアシックスは2030年までにシューズおよびウェアのポリエステル材を100%再生ポリエステル材に切り替えて、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを。ミズノは2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指している。

各メーカーは独自の取り組みで、地球環境に配慮したシューズ作りを実践しているが、値段はやはり安いとはいえない。