WHOが「懸念される変異株(VOC)」に指定

11月25日、南アフリカの衛生当局が「新型コロナウイルスの新たな変異株を検出した」と発表した。翌26日には、WHO(世界保健機関)がこの変異株を警戒度の高い「懸念される変異株(VOC)」に指定し、「オミクロン株」と命名したことを明らかにした。懸念される変異株としてはアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株に次いで5番目となる。日本の国立感染症研究所もVOCとして扱うことを決めた。

日本政府は緊急避難的な予防措置として全世界を対象に外国人の入国を11月30日午前零時から年末まで禁止し、岸田文雄首相が「まだ状況が分からないのに『岸田は慎重すぎる』という批判は私がすべて負う」と危機管理に対する決意を示した。

2020年9月、人が少ない成田国際空港
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安倍、菅両政権の新型コロナ対策の失敗を強く反省し、素早い対応を取ったのだろう。こうした決意表明は一国の首相として欠かせない。国民の不安を解消することにつながるからである。

WHOによると、オミクロン株には人の細胞に取り付くウイルス表面のスパイクに多くの変異が入り、既存の変異ウイルスに比べ、感染力が高い可能性がある。南アでは11月中旬から新規感染者が増え、感染の株がデルタ株からオミクロン株に置き換わってきている。とくに最大都市のヨハネスブルクのあるハウテン州では感染が急拡大している。南アに隣接するボツワナのほか、イギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダ、イスラエル、ベルギー、オランダ、香港など世界15カ国以上の国・地域で感染が確認されている。

同時多発的な流行で、感染症対策として国家レベルでも個人レベルでも警戒が求められる。

日本政府の徹底した水際対策にも限界はある

11月30日には日本で初めて感染者が確認された。厚生労働省によると、感染者はアフリカ南部のナミビアから28日に成田空港に到着したナミビア人の30代の男性外交官だ。入国時の検査で新型コロナ陽性と判定され、ウイルスのゲノム(遺伝情報)解析でオミクロン株と特定された。男性は医療機関に隔離されている。

男性はモデルナ製のmRNAワクチンを7月に2回接種していた。入国時に無症状だったが、29日に発熱した。同行していた家族2人を含め、同じ航空機の乗客70人は検査では陰性だったが、厚労省は70人全員を濃厚接触者として扱い、自宅や宿泊施設に待機させている。乗員の10人は日本に入国していない。

岸田首相がアピールした日本政府の徹底した水際対策である。だが、敵は目には見えないウイルスだ。水際対策にはどうしても限界がある。

だからと言って手を緩めるのではなく、水際対策で時間を稼いでオミクロン株の正体を突き止めることが大切だ。具体的には既存のワクチンや治療薬の効果を確かめ、有効な対策を導き出したい。