「ピーチのサービスに合わせる時が来るかもしれない」

——プレミアム戦略をどう評価していますか。

スターフライヤーの白水社長
スターフライヤーの白水社長(筆者撮影)

【白水社長】スターフライヤーは利用者から高い満足度を得ています。JCSI(日本版顧客満足度指数)の国内長距離交通・国内航空部門では、顧客満足1位を11年連続して受賞し、2020年こそ2位となりましたが2021年度で返り咲きました。社内では、お客様からの声をCV(Chance Voice)という形にし、いい仕事をした人がさらに飛躍できる環境を作っています。受賞は戦略として狙ったものではなく、職場環境から生まれたものです。

——スターフライヤーのプレミアム戦略がコロナ禍で足かせになってはいませんか。

【白水社長】スターフライヤーはビジネス顧客にプレミアム戦略が支持されて業績を伸ばしてきました。今でも、私はビジネス顧客がいなくなるとは思っていません。コロナが収束すれば必ず戻ってきます。ただ、それまでは一時的にでもレジャー客にターゲットを絞った戦略を取る必要があると思います。

——コロナ禍がこのまま続き、提携先を見付けざるを得なくなる場合、どのように動きますか。

【白水社長】一時的にでもレジャー客にターゲットを絞るのであれば、ピーチのサービスに合わせる時が来るかもしれない。その時はスターフライヤーがLCCになる時です。その可能性が全くない訳ではないと思っています。あらゆる可能性を検証しています。

スターフライヤーに残された道

「スターフライヤーがLCCになる」可能性に触れた白水社長の発言に、一瞬、耳を疑った。これは創業以来スターフライヤーが求めてきた「プレミアム戦略」を捨てることを意味する。LCC事業は、スターフライヤーのプレミアム路線とは真逆を行く戦略だからだ。

だが、白水社長が語った「LCCになる」という選択肢以外に道はないのだろうか。筆者はスターフライヤーには三つの道が残されていると思う。

ひとつは、同じANA系列のピーチとの統合だ。同じ機材、同じエンジンを装備しており、過去にピーチはバニラエアとスムーズに統合した経験を持つ。

ピーチは国内線の羽田空港発着枠を持っておらずメリットは大きい。スターフライヤーと経営統合すればこの枠が手に入るからだ。サービス内容は対極を行くが、そんなことを言っている場合ではない。会社の存続が優先される。

このプランは、全くの空想ではない。筆者は、北九州空港にあるスターフライヤーの施設で、ある光景を目にした。それは客室乗務員が機内を模した模擬訓練装置「モックアップ」内でピーチの客室乗務員が訓練を行っていたからだ。

模擬訓練装置「モックアップ」内でピーチの客室乗務員が訓練を行っていた
筆者撮影
模擬訓練装置「モックアップ」内でピーチの客室乗務員が訓練を行っていた

同じ機体を使っているからこそできる協力関係だが、提携先も見つからず苦境に立つスターフライヤーの現状を踏まえれば異なる意味を持つ。