新生だけでなく、国も無策だった

2000年の新生銀行発足以来、公的資金返済が課せられていたにもかかわらず、現在でも返済に至っていない。現経営陣を含め新生銀行の歴代経営陣の責任は重い。

無論、公的資金返済は新生銀行だけの責任ではない。監督官庁である金融庁や大株主の預金保険機構と整理回収機構など当局側にも大いに責任がある。

政府も新生以上に無策だった。公的資金返済に向けて、結果的に今まで何もできなかったのだ。政府・金融当局は、SBIの計画に、裏で賛同したり姑息に動き回る前に、新生銀行の経営陣と対話を重ねたり、特別検査などを実施するなどビジネスモデルのあり方や公的資金返済に向けての知恵を絞るのが筋ではなかっただろうか。時間はたっぷりあったはずだ。

ノートに書かれたビジネスモデル
写真=iStock.com/designer491
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利益の大部分は「ノンバンク業務」

このように、SBIサイドや政府・当局の対応の杜撰さ、懸念事項は多いものの、新生銀行による買収防衛策が取り下げられたことで、SBI主導による新生銀行の運営が進むことになる。公的資金返済を含め、肝心のTOB後のビジネスモデルをどう構築するのかが、SBIには今後より一層問われることになる。

とにもかくにも、公的資金返済のためには、さらなる収益の確保が大前提だ。前期451億円だった最終利益をいかにして増加させて、資本を蓄積し、株価上昇につなげていくのか。

実際のところ、現状の新生銀行は、銀行という名のノンバンクといえる。過去に買収した旧レイクを母体とする新生フィナンシャル、アプラスフィナンシャル、昭和リースの傘下3社による、無担保ローン、ショッピングクレジットなどにより利益の大部分がもたらされているのだ。実際、新生銀行全体の利益のうち、これら傘下3社によるノンバンク業務が占める割合は75%に達している(与信関係費用加算後の実質業務純益、2020年度末)。

ビジネスモデルが二転三転してきた“伏魔殿”

こうしたノンバンクビジネスへの注力に加え、一足先に公的資金を完済したあおぞら銀行のように、新生銀行もスマホアプリやネット銀行子会社をそろえ、成長性ある個人資産運用や中小企業向けDXサポートなどを強化し、次世代型銀行に変貌する選択もあるはずだ。

大胆なビジネスモデルの変更とともに、大胆なリストラも必要になろう。

新生銀行発足当初は、米系ファンド主導で、リテールバンキングを強化していた。それがうまくいかず、その後は投資銀行業務に傾斜するもののリーマンショックで頓挫、2010年には、あおぞら銀行との経営統合も破談し、現在は、買収したノンバンクからの収益を柱としている。経営陣や経営方針、ビジネスモデルが、二転三転しているのだ。

紆余曲折あり、伏魔殿のような新生銀行を経営するのは、百戦錬磨の北尾社長率いるSBIとて並大抵のことではない。「やっぱり無理でした」と、SBIも匙を投げるという結末だけは、誰のためにもならず、避けなければならない。

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