DV妻の不倫

家で仕事をするようになった橋本さんは、妻の外出を不審に思い、「いつも誰とお出かけしてるの?」と声をかけた。

すると沈黙の後、「おめーに関係ねーだろが」と妻。

「いや、でも気になるから」と橋本さんが言うと、「あたしが誰と遊ぼうがあたしの勝手だろーが!」と一蹴。

また別の日、橋本さんが仕事をしていると、隣の部屋で、妻が誰かと電話をしている。聞こえてくる会話は、まるで恋人同士のよう。

電話が終わった後、「いつも男友だちと遊びに行ってたの?」と問いかけた。すると妻は悪びれもせず、「だったら何?」と言う。

橋本さんが、「不倫とかやめてね」と言うと、「してないし! 人の交友関係に口出しするの、やめてくれる?」と妻。

その数日後、「今日は朝まで女子会だから」と言って出かける妻。「平日に朝まで女子会なんて、どこでやるんだろう? 女友だちの家かな?」などと考えながら、橋本さんは娘たちに夕飯を食べさせ、風呂に入れて寝かせる。

翌朝、娘たちを保育園に送り届け、仕事を始めようとしたときに、「駅まで迎えに来て」と妻から電話。

自宅に到着すると妻は、「寝るから昼過ぎに起こして」と言って荷物を置き、寝室へ向かう。何気なくテーブルに置かれたライターを見ると、ラブホテルのライターだった。

すぐにライターを手に取り、妻を問いただす。「不倫なんてするわけないって言ってんだろが!」と怒鳴るが、その首筋には明らかにキスマークが……! 結局、妻はすべてを自白したが、その後、ますます橋本さんに対するDVをエスカレートさせた。

橋本さんはなおも、「まだやり直せる」と思っていた。なぜなら、「(自宅に)帰ってきてくれるから」。次第に橋本さんは、妻が側を通りすぎるだけで動悸がするようになっていた。

背中合わせに座るカップルのシルエット
写真=iStock.com/Hibrida13
※写真はイメージです

つのる不満と出現する不調

妻は、仕事のやり方にも口を挟んできた。

橋本さんが、「取引先に、挨拶がてら資料を渡してくる」と言うと、「電車代やガソリン代がもったいないからメールですませろ」。「担当さんと顔を合わせてつながりを持っておきたい」と説明しても、「電話でいいだろが」の一点張り。

橋本さんの売り上げは伸び悩んだ。

「今日こんなことがあったよ!」「パパ遊ぼ〜!」と駆け寄ってきてくれる娘たちに癒やされる橋本さんだったが、そんなときは決まって、「今月の売り上げはどうなってんの?」とピリピリした妻が割り込んでくる。娘たちの表情はみるみる暗くなった。

橋本さんは、娘たちとの楽しい時間さえ、いとも簡単につぶしてしまう妻への不満が日に日に大きくなっていった。

「どうしたら家族で平穏な日々が過ごせるのか? 楽しくご飯が食べられるのか? 普通の生活ができるのか?」そればかりを考える。

気がつくと橋本さんは、強烈な肩こりや頭痛、食欲不振や吐き気、不眠に悩まされるようになっていた。

「妻は、娘たちの前であろうと、私に対しては一方的に怒鳴り散らしていましたが、幸い娘たちにはイライラをぶつけたり、手を上げたりといったことはありません。優しく、しっかりした母親でした」

だから、「自分はこの家庭にいないほうがいいのではないか?」と考えた橋本さんは、妻に「距離を置こう」と提案する。

しかし妻の言い分はこうだった。「お前が我慢してたらすむこと」「精神的に限界とか知らん。潰れないよう頑張れ」「距離を置いても私は変わらん」「両親が離れ離れになったら娘たちがかわいそう」「私を怒らせるお前が悪い」。

橋本さんは、「もう無理だ」と、途方に暮れた。