テスラで一番働いているのはイーロン・マスク

イーロンは以前に南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院のスピーチで「とにかくがむしゃらに働くことが大切だ」と述べていた。

そして、「他の人が50時間働いている間に100時間働けば、2倍のことが達成できるはずだ」と学生たちに語りかけたとおり、イーロンがスーパーハードに働く姿をテスラやスペースXの社員たちは日常的に目にしていた。

「テスラで一番働いているのはCEOのイーロンだ」と社員たちは口をそろえて言う。イーロンは生産ラインで作業することをいとわず、ブランド物のスーツが汚れることも気にしない。全身全霊で仕事に打ち込むイーロンの姿を見て、社員たちは奮い立つのだった。

スーパーハードに働くイーロンだが、彼が工場で寝ている姿も従業員たちはよく目撃していた。

テスラのある社員は、机の下で丸まって寝ているイーロンを見つけたことがあったし、別の社員は、工場の警備員が立っていた近くにあるテーブルの下で毛布にくるまって寝ているイーロンを発見した。

猛烈に働き、バッテリーが切れるとイーロンは工場の床でも、会議室でもどこでも寝るが、それは長い時間ではなく、充電すれば再起動して頭をフル回転させ、社内を飛び回り、技術者と議論を始める。

自動化ロボットが役に立たず生産がストップ

テスラの3万5千ドルのEVセダン「モデル3」は販売が絶好調で、2020年にテスラが時価総額でトヨタを抜き、世界一の自動車メーカーになった原動力であり、今年9月には欧州でガソリン車を抜いて最も売れた自動車になった。

モデル3は従来のクルマと大きく違って、フロアのシフトレバーも、サイドブレーキも、スピードメーターもない未来型のEVで、予約注文だけで40万台を超えた。

ところが、量産立上げ時は製造現場が混乱に陥り出荷が遅れた。原因は生産ラインの過度な自動化だった。自動化ロボットが役に立たず、リチウム電池工場ではバッテリーモジュールの生産が止まり、組み立て工場ではロボットが部品をつかみ損ねるなどして、モデル3の出荷が遅れた。

工場生産ラインの自動車
写真=iStock.com/alvarez
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このとき、CEOのイーロン・マスクは何をしていたか?

製造ラインに飛び込んで、工場に寝泊まりし問題解決に連日奮闘していた。それでも出荷台数の挽回は一筋縄ではいかず、ついに工場の外にフットボール場ほどの巨大テントを立てて生産ラインを新設し、生産数量を増加させてなんとか注文に応えていった。