「竹山団地は表現の場。部員を地域のリーダーに育てたい」

部員は仕送りなしで自活できるのが究極の理想。就職するときは企業にとって即戦力になっている。そうやって日常生活を充実させた上に、サッカーも強かったら最高だ。

サッカー部監督に復帰するとき、社会活動のロードマップを示して大学当局に評価されて採用された、という。今や監督業よりも“地域貢献担当事業部長”役が忙しい。将来は監督業から身を引いたとしても、地元に根を下ろして、いろんな学生と野菜を作ったり、地ビールを作ったりしたいという。

「サッカーは好きだけど、詳しくない(笑)。地域活動の比重が大きい。こんな監督いないですよね」

いたずらっぽく笑う大森だが一転、マジメな顔をしてこう語ったのが印象的だった。

「これからリニアエコノミー(物資を大量消費する線形経済)を脱する時代です。SDGsとの親和性の高いサーキュラーエコノミー(循環経済)を標榜する時代になると思う。そういう社会をけん引する人材を育てることが大学スポーツの役割になると思うんです」

地元選手を大事にする監督どころか、町おこしを率先し、地域を活性させようとしている。大森はそんな実業家であり、プロデューサーのような存在だ。

神大サッカー部は今、「地域連携による中正堅実な人材を育成」を掲げる。巣立つ時は自立と共生ができる力が育まれているように、という思いがそこにはある。

「竹山団地が表現の場であって、ここで地域のリーダーになれる人材を育てていきたい。学生はいい社会を作るお手伝いをリアルな活動の中でやっています」

団地
撮影=清水岳志
 部員が住む竹山団地

就職面接でも、学生時代にやってきたことを言語化できれば企業も興味を示す。最近は、神大サッカー部から京セラ、住友林業、横浜銀行など大手企業への就職も増え、教員になる部員もいる。

持続可能な開発目標、SDGsの11番。〈住み続けられるまちづくりを都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする〉

残念ながら、今シーズンは関東大学サッカーリーグ2部で最下位が確定し、来季は下部リーグに降格する。ただし、竹山団地プロジェクトで大森の指導の下、神大サッカー部員はSDGsの只中で着実に成長を続けている。(文中敬称略)

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