ウェブ検索やメール、地図サービスなどグーグルのサービスは多くが無料だ。メディア論研究者の宇田川敦史さんは「グーグルは利用者の閲覧履歴などを広告ビジネスに活用している。利用者は自身のプライバシーの価値にもっと意識を向けたほうがいい」という――。
iPhone上に表示されたグーグルマップ、Google、Gmailのアプリ
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ネット生活で欠かせないグーグルのサービス

日本で一番アクセスの多いウェブサイトといえば何を思い浮かべるだろう? ヴァリューズの調査によれば、2020年の訪問者数1位はGoogleで、推計訪問者数は年間1億1155万人にも上る。2位はAmazon、3位は楽天市場、4位はYouTubeで、5位にYahoo! Japanが入るという構成だ。意外(?)かもしれないが、SNSのTwitterは7位、Facebookは9位となっており、いわゆる「プラットフォーム」の中でもGoogleの存在感がかなり大きいことがわかるだろう。

そのGoogleの親会社Alphabetの2021年第3四半期(7~9月)決算が10月26日に発表された。それによると、売上高は5四半期連続で過去最高を記録し、特に今期の広告売上は対前年比43%増と非常に好調だという。

Googleは、検索エンジンを中心的なサービスとしつつ、GmailやGoogleマップ、AndroidやGoogle Chromeなど、ネット生活の基盤となるようなサービスを多岐にわたって展開している。意識する/しないにかかわらず、スマートフォンを持ち歩く生活をしている私たちはほとんど毎日のようにGoogleのサービスに接触しているといっても過言ではない。そしてそのサービスのほとんどは無料である。

なぜ広告主の透明化を進めているのか

決算からもわかるとおり、この無料のサービスが実現可能なのは、Googleが広告ビジネスを収益源にしているからだ。実際、Googleの収益の8割以上は広告によって賄われており、Googleは世界最大のネット広告配信プラットフォームになっている。

2021年9月22日、Googleは「広告の透明性向上」のために広告主の出稿履歴を公開する計画を発表した。このことによって、ユーザー自身がGoogle広告の広告主が誰であるかを識別できるだけでなく、その広告主が過去にどのような広告を出稿していたかを確認できるようになるという。本稿ではこの変更の背景と、一般ユーザーへの影響について検討したい。