大企業ですら「新卒採用」で苦しむことになる

実は、少子化の真の恐ろしさは社会から「若さ」を奪うことにある。いつの時代も新しいモノやブームは若者によって作られてきたが、若者が激減すればそうしたことを生みだす力は弱っていく。今後の日本では、これまで以上にイノベーションが起こりづらくなるということだ。

若い世代の減り方は驚くばかりである。例えば、来春就職する大学4年生の多くが生まれた1999年の年間出生数は117万7669人であった。これに対して、10年後の2009年生まれは1割ほど少ない107万36人だ。20年後の2019年生まれは86万5239人と4分の3ほどでしかない。

わずか20年で25%以上も減ってしまっているのである。これでは大企業も求めるレベルの新卒者を採用し切れなくなるだろう。新風がなかなか吹き込まない企業では組織の陳腐化が進むこととなる。

1980年代には「企業30年説」と言われたが、その後ビジネスを取り巻く環境の変化は速さを増した。東京商工リサーチによれば、2020年に倒産した企業の寿命は平均23.3年だ。これに少子化に伴う組織の陳腐化が加わったならば、企業の寿命はさらに縮む。

スーツを着てメモをとっている人
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「勤労世代が減ること」を前提に企業経営をするべきだ

もはや企業規模の大小を問わず、自分の勤務先がいつまで存続するのかを疑ったほうがよい。倒産・廃業にまで至らなくとも、若者が減り続ける社会では終身雇用や年功序列といった日本の伝統的な労働慣行は続きようがない。

日本は、勤労世代が減ることを前提とするしかないのである。それに対応し得る社会システムの作り直しや企業経営を改革しなければ、社会が機能不全に陥るところまで追い込まれているとの認識が必要だ。

残念ながら、政官界は鈍感だ。先の自民党総裁選でも具体策は聞こえてこなかった。経済界も、量的拡大という総人口が増えていた時代の成功モデルから脱し切れない企業経営者が少なくない。

人々の意識が変わっていない証左は、東京一極集中だろう。多くの人々がいまだ東京の「巨大マーケット」に魅せられている。

しかしながら、東京も人口減少と少子高齢化からは逃れられない。東京都総務局統計部の推計によれば、都の人口は2025年に約1422万5000人でピークを迎え、2040年には約1365万4000人になる。

東京の合計特殊出生率は全国で最も低い(2020年は1.13)。これまでは他の道府県から人口をかき集めることで“見せかけの人口増加”を続けてきたが、地方の出生数減は激しく今後は集められなくなるということである。