「セロトニンは朝起きたときから夕方まで分泌されます。夜になると睡眠を誘発するメラトニンがセロトニンから作られます。セロトニン不足になるとメラトニンの生成と分泌に影響し、睡眠リズム障害につながります。生活のリズムが崩れ、睡眠不足が続けば、鬱になることもあるでしょう。睡眠不足は万病のもと。寝不足が脳の機能を低下させるので、認知症を引き起こしやすくなります。メラトニンはヒーリング効果があることもわかっています。セロトニンは、積極的に増やしていきたいものなのです。

腸が健康であることは、セロトニンがたくさん分泌されているサインになります。なぜならセロトニンは90%が腸で作られ、腸の蠕動ぜんどう運動(消化した食べ物を腸の中で移動させたり便を体外へ排出させたりする)に作用するからです。腸内細菌はセロトニンの分泌を助け、セロトニンの前駆体であるトリプトファン(必須アミノ酸)を作ります。トリプトファンは、気分の改善や双極性障害などに対する抗精神作用を持つことが報告されています。

トリプトファン自体は体内では作られないので、食べ物から摂取する必要があります。つまりセロトニンを増やしたければ、トリプトファンが必要。トリプトファンは食事で摂ることができ、主な食材は魚ではマグロの赤身、カツオの赤身、鮭。肉類では豚肉、牛肉、鶏肉。大豆は納豆、豆腐、豆乳。乳製品は牛乳、チーズ、ヨーグルト。ほかに玄米、そば、バナナ、ブラックチョコレートなどです。このように、セロトニンそのものだけでなく、前駆物質のトリプトファンも総じて大事なのです。

日本人は特に周りに気を使う傾向がありますから、世界標準よりもセロトニンが必要なのではないかと思います。日本の世論は『いろいろなものに配慮する前提で生きていけ』という風潮があったり、文化的に見ても『空気を読む』ことが美徳とされてきました。世界的に見てもセロトニンの必要性が高い精神構造を持っています。

セロトニンがあると、昼間は優しく楽しく幸せな気持ちで過ごせます。夜になると、それがメラトニンに代わってぐっすり眠れます。セロトニン系列の物質は、昼も夜も活躍しているのです。まずは腸内細菌を良い状態に整えること。これが今の時代を生きるために必要です」

ランチには親子丼と味噌汁を

セロトニンを分泌させるには食事にカギがありそうだ。ポイントを料理研究家の生井理恵氏に聞いた。

「セロトニンは腸で90%作られるので腸内環境を良くしましょう。野菜・果物の食物繊維に、発酵食品(ヨーグルト・納豆・キムチ・漬物・味噌)をプラスすることで栄養素の利用効率が高まってより腸内環境が整いやすいです。ほか、オリゴ糖(バナナ・大豆・タマネギ・ゴボウ・アスパラガス・ニンニク)も腸内環境を整えてくれる成分です。

セロトニンは朝から作られます。トリプトファンはセロトニンを作る材料になるので、朝からこのような食材を積極的に摂るといいでしょう。特に、前出の食材を含んだ納豆卵かけご飯と豆腐の味噌汁は鉄板です。また目玉焼きや卵焼きなど、卵もトリプトファンを多く含む食材なのでおすすめです。」