「逃げるは恥だが役に立つ」は、もともとはハンガリーのことわざだ。なぜハンガリーでこの言葉が生まれたのか。放送ジャーナリストのDr.マンディープ・ライさんは「そこにはハンガリーの悲劇的な歴史が関係している」という――。

※本稿は、Dr.マンディープ・ライ『世界を知る101の言葉』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ブダペストにある国会議事堂に掲げてあるハンガリーの国旗
写真=iStock.com/MarinaLitvinova
※写真はイメージです

地球上で最も競争の激しい地域の一つ

奇妙で面白いコンテストは世界中にありますが、ハンガリーの「墓穴掘り」の全国大会ほど変わったコンテストはないかもしれません。

墓の穴をどれだけ速く、どれだけ美しく掘れるかどうかで評価されるなんて、日常的にはありません(ちなみに優勝者は、30分を少し超えるタイムでした)。

このコンテストには、新たな人材の確保に苦労している業界を活気づけるという重大な目的がありますが、大きな意味では、ハンガリーの価値観の表れといえそうです。というのもハンガリーという国は、地球上で「最も競争の激しい地域」の一つだからです。

資金調達を競うデジタルスタートアップ(IT新興企業)から、伝統的な騎射(馬上から弓を射る競技)で競う騎手(世界選手権の開催地です)まで、ハンガリーは、「一番」を競う人や組織であふれています。この国の価値観をひと言で表すならば、間違いなく「競争力(Competitiveness)」になるでしょう。