「音声」の未来可能性は想像以上

そんな音声メディアの特徴から、筆者は今後、忙しくて時間のない、トップのタレントや経済人、スポーツ選手などが、動画よりも音声メディアに移行して、どんどん配信が広がるのではないかと考えている。

彼らはマルチタスクに慣れており、世の中に伝えたいメッセージや動機を持ち、その需要もありながら、決定的に時間がない。しかし音声メディアなら、5分の隙間時間で5分間のおしゃべりという、かなり充実したコンテンツを届けることができるからだ。

著名人が牽引けんいんすることで、多くの人がどんどん音声メディアに参加、配信をしていけば、これまでテキストと動画中心だったインターネットに、良質な音声コンテンツが加わり、それがアーカイブされていくことが予想できる。

音声によるテキスト入力は、キーボードやフリック入力より4倍ほど速いといわれている。筆者もTwitterやメール返信、簡単な文章などは、すでに音声入力で行っているが、変換の精度はここ1~2年でかなり進化した。テキスト化されたものを見直してもほぼ修正する必要がない。

このように、気軽に音声でアウトプットできる環境が整い、音声入力する人が増えていけば、ネットの音声データはかなり早いスピードで、その情報量が増えていくと思われる。そして、そうした音声データは、多くの人が楽しめるようになるだけでなく、それ自体が膨大なビッグデータとなり、それをAIが解析することで、知識やアイデアが連結されて、どんどん新しいものが生まれていくはずだ。

音声&AIは「買い」

以前、別件で取材した、営業ツールを開発する日本のセールステック企業では、営業マンと顧客とのすべての会話を音声データで取得してビッグデータを作り、営業トークと営業成績との関連性を分析するツールを開発していた。

三戸政和『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント社)
三戸政和『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント社)

わかりやすいところでは、「ありがとうございます」という言葉がよく出てくる営業トークは営業成功の場合が多い。つまりそのツールを使えば、営業トークという音声を基に作られたビッグデータがAIによって分析され、「どんな資料を基に、どんな言葉を使ってどう会話を組み立てれば営業が成功するか」という営業の勝ちパターンが見いだせるということだ。

このように音声を基にしたビッグデータが増えていくと、AIによってできることが増えていく。

音声メディアの利用が広がれば広がるほど、その可能性は高まるだろう。こうしたところが、事業投資家という立場から見える音声メディアの可能性だ。

今後の音声メディアは「買い」だといえる。

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