「命にかかわるイジメ」が過去最多に

文部科学省の調査によると小・中・高校のイジメ件数は平成の後半からうなぎ登りで2019年には61万件を超え、過去最多となった。件数の増加そのものはイジメが社会問題化し、それまで見過ごされていたものが表面化したということもあるだろうし、現場で積極的に対応した結果のあらわれともいえる。

しかし、いじめ防止対策推進法でいうところの重大事態、すなわち「児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認める」事態もまた過去最多となっていることをみると、やはり問題は深刻さを増しているといわざるをえない。

イジメは通常、児童・生徒間で発生するものだが、教師から児童や生徒に対して行われるものに体罰がある。文部科学省は部活動中の体罰が生徒の自殺につながったとみられる件を受けて、2012年に全国の中学校・高校で詳細な実態調査を行った。その結果、体罰件数が5088件、うち部活中に発生したものが2022件にのぼった。

「相談しても無駄だと思った」が67.3%に

また神戸市の公立小学校における暴行事件がきっかけで注目を集めた教職員間のハラスメントも、依然として後を絶たない。全日本教職員組合が青年教職員を対象として2019年に行った調査では、回答のあった811人のうち、パワハラを受けた(「よくある」「ときどきある」の合計)という人が31.9%と3割強を占めている。さらにハラスメントを受けた人の3割近く(29.4%)が「ハラスメントが原因で退職しようと思ったことがある」と答えている。

企業など職場全体に視野を広げると、いっそう深刻な実態が浮かび上がってくる。

暴力・ハラスメントを根絶する条約がILO(国際労働機関)で採択され、日本では通称「パワハラ防止法」が成立した2019年、連合(日本労働組合総連合会)は全国の20~59歳の有職男女(経営者、自営業者などを除く)1000人に対してインターネットで調査を行った。

その結果、37.5%の人が「職場でハラスメントを受けたことがある」と答えている。しかも年齢層や性別の違いを超え、広く蔓延している実態がうかがえる。さらにハラスメントを受けた人の44.0%はハラスメントを受けても「だれにも相談しなかった」と答えており、理由としては「相談しても無駄だと思ったから」が67.3%と突出して多い。

回答の中からは、やはり組織に構造的な問題があることがひしひしと伝わってくる。