ドラッカー・スクール・オブ・マネジメント准教授、ジェレミー・ハンター氏が開発したセルフマネジメントのプログラムは、その実践性の高さから「人生が変わる授業」と称され、キャリアアップを望むビジネスパーソンが世界中から集まってくるほどの人気を博している。日本にも造詣が深いハンター氏は「わたしの日本人女性のクライアントは、理不尽なことがあっても自分を抑えて行動しがちだと言います。その代償として、イライラやストレス、抑圧された怒りがあるのです」と指摘。日常的にふりかかるクレイジーな出来事と自分の感情に賢く対処する方法を聞いた――。
新鮮な空気を得るために朝のカーテンを開ける
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なぜ、わきまえてしまうのか

わたしはロサンゼルスにあるクレアモント大学院大学ドラッカー・スクール・オブ・マネジメントで教えています。さまざまなご縁から、ドラッカー・スクールの卒業生でもあるビジネスパートナーと日本でTransformという法人を立ち上げました。年に数回日本を訪問する機会に恵まれ、日本のビジネスパーソンや経営者、社会変革に取り組むNPOのリーダーなどを対象に、アメリカでの講演内容を凝縮したワークショップを開催しています。

日本でも長くセルフマネジメントを教えてきて、気づいたことがあります。それは、日本人が仕事、家事、育児などのあらゆる面において「ちゃんとしたやり方」があると信じ込みがちなこと。そして、その「ちゃんとしたやり方」をしないと誰かの怒りを買ってしまうと思い込みがちで、ついわきまえてしまう傾向にあることです。

もちろん、きちんとやること自体が問題なのではありません。問題は、社会的に定められた「正しい方法」が、ストレスの多い、あるいは最適ではない結果を生む場合です。人はこの「ちゃんとしたやり方」に窮屈さを感じます。

本当に怒られるのか

このついわきまえてしまう傾向は、日本を含め、儒教の影響を受けてきた東アジア文化圏において顕著です。なぜなら、個人のアイデンティティーよりも社会的な役割を重視してきた歴史的・伝統的背景があるからです。

しかし、本当に「ちゃんとしたやり方」でないと怒られるのでしょうか? その思い込みが正しいかどうかを検証せずに、社会に与えられたデフォルトの役割に無自覚に従っていることのほうが多くなってしまってはいないでしょうか。