筆者は当面、円は安全資産として見なされると考えるし、危機を煽るつもりも全くない。だが、30年維持してきた「世界最大の対外純資産国」というステータスにドイツが肉薄していることを契機として、円が安全資産としての魅力を失い「極端な円安」がテーマ視されるような将来にも少しずつ想像を巡らせていきたいと思っている。

上述の通り、事実として、対外純資産においては「売られて戻ってこない円」が増えている疑いがあり、それが相場に影響を与えている節もある。日本ではいまだに極端な円高におびえる風潮が強いが、資源輸入国としては極端な円安も警戒対象である。

金融チャートとスマホを見つめる女性
写真=iStock.com/kokouu
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「円高よりも円安のほうが怖い」という認識を持ったほうがいい

そもそも(政治的に可能かどうかは別の話として)理論上は自国通貨売り・外貨買いは無限にできるが、外貨売り・自国通貨買いは外貨準備分しかできない。「極端な円安」を抑止する弾薬は有限なのである。

「本当に制御不能になった場合、怖いのは円高よりも円安」という至極当然ながら、日本では長らく意識されてこなかった事実が、「世界最大の対外純資産国」のステータスが危うくなる中で周知されるようになれば、将来の日本の経済政策(とりわけ為替に隷属しがちな金融政策)の在り方も変わってくるのではないかと思われる。

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