投資を始める際、損をしないためには購入時にどんな対策をするべきか。作家の鳥居りんこさんは「私の老母は、銀行に勧められるまま購入した約3000万円分の投資信託を頻繁に売買した結果、約2000万円相当を損しました。騙されたも同然の類似案件は多いので、客は賢くならなければなりません」という。鳥居さんがファイナンシャルプランナーの藤原未来さんに12のトラブル防止法を聞いた――(前編/全2回)。
多数の一万円札
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投資の素人が「騙された」と思わずにすむ銀行窓口攻略法

——「金融の素人が知っておくべき資産運用を学ぶ」シリーズ(※)、最終回の今回は「銀行窓口攻略法」です。

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拙著『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(学研プラス)で70代の母親がある銀行に勧められるまま購入した約3000万円分の投資信託で約2000万円相当を損した話を「大銀行に騙されたも同然」と書いたことで、同じように「ウチの老親もです!」とその事例を寄せてくれる人たちがいました。「わが家だけではなかった!」というのは私の慰めにもなりました。一方で、改めてこうした事例が多いことを実感し、“自己責任”として切り捨ててはいけないと思いました。

【藤原未来(ファイナンシャルプランナー)】そうですね。“振り込め詐欺の防止策”ではないですが、ケーススタディを学ぶことによって銀行とのトラブルが防げる場合もありますので、まずはお年寄りが陥りやすい失敗事例をご紹介しましょう。

【ケース1 A氏(87歳)地方都市在住(ひとり暮らし)】
A氏は、数年前に銀行の勧めで複数の分配型投資信託を購入。銀行は、古株の県民からは絶大な信頼を得ている県内最大手銀行。行員の訪問がきっかけで300万円の投信を3種類購入(計900万円)。以来、半ば銀行に言われるがまま売買を繰り返した。

だが、息子(50代)が帰省した際、A氏が「毎月、利子としてまとまった金額が振り込まれてきて、さすが○○銀行だ!」と語ったことで事態が発覚。

息子が取引明細書を確認し「それは利子ではなく、特別配当という名を語った“たこ足配当”で、自分の預金を切り崩して普通預金に入金されているだけ」と説明。

しかし、A氏は「実際に毎月お金が振り込まれているのは利益が出ているから。○○(銀行)の支店長さんもわざわざウチに来て挨拶してくれたんだ。あんな立派な人が、年寄りが困るような商品を案内するわけがない!」と答え、なおも説明ようとした息子の話を打ち切り、以来、親子の仲はギクシャクしている。

——300万円の投信を3種類購入……からの頻繁な売買。これ、ウチの母のケースと全く同じです。銀行は違いますけど。もしかしてどの銀行でも行っている営業手段でしょうか。A氏はどんな点に注意すればよかったのですか?

【藤原】そうですね、誤解のないようあらかじめ申し上げますが、世の中のすべての「分配型投資信託」が悪い商品というわけではありません。ある時期「銀行や証券会社にとって売りやすく儲かる商品」として乱暴な販売手法が横行したため、すっかり「悪者扱い」にされてしまいましたが、中には使い勝手のいい商品も存在します。

ただし、A氏の場合も少々乱暴な売り方をされた印象は否めません。A氏はどうすれば良かったのでしょうか。信頼を置いている銀行だけに「振り込め詐欺」のように「まずは疑ってかかってください」というわけにもいかないですよね。こんな時にこそ思い出してほしいのは、前々回の記事で紹介した〈投資してはいけない人12項目〉です。