近年、「部活ダンス」が女子高生の間で大きなムーブメントになっている。このうち「日本最強」といわれるのが、全国制覇6回の同志社香里高校(大阪・寝屋川)だ。同校のダンス部にはコーチがいない。なぜそれでも強さを維持できているのか。NHKのドキュメンタリー番組で同校に密着した映像ディレクターの中西朋氏が解説する――。

100人超をまとめ上げる女子高生リーダーのスゴさ

「高校ダンス部を取材してドキュメンタリー番組を作っている」と知人のビジネスパーソンに話すと、ほぼ必ず「高校ダンス部ってなんだっけ? という言葉が戻ってくる。

中西朋『高校ダンス部のチームビルディング』(星海社新書)
中西朋『高校ダンス部のチームビルディング』(星海社新書)

「あのバブリーダンスで話題になった」と答えると「ああ、知ってる」という小さなリアクション。そして「女子高生を追いかけて何が見えてくるわけ?」と怪訝なニュアンスで質問が飛んでくる。テーマは「若い世代のチームワーク」で、例えば強豪ダンス部の部長たちは100人を超える女子を見事に統率してステージを作り上げている……とここまで話すと、ほとんどの人は「すごい! ぜひコツを知りたい」と目を輝かせ始める。

先日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、多くの批判を受けた。ジェンダーレスが叫ばれる時代に、女性の社会進出にブレーキをかけるような発言はもってのほか。いわずもがな、これからは女性たちとも良きチームワークが築けるリーダーにビジネス上の勝機が訪れるはずだ。

良かれと思った言葉が空回り、針のムシロ状態

しかし、現実問題として中間管理職が見えてきた社会人から「職場での女性スタッフとの付き合いに苦労している」という悩みを頻繁に聞く。ある程度キャリアを積んだ女性でさえ「若手女性スタッフらと良いチームワークを築く」ことに難しさを感じている人が多いようだ。

良かれと思って重ねた言葉が、なぜか空回り。こちらは褒めているつもりなのに相手の顔色が曇り、いつの間にか距離を取られてしまう。リーダーあるいはサブリーダーとして会議を正しく仕切っているはずなのに後輩女性のリアクションが薄くそれこそ針のムシロ……。

300人ほどが在籍する企業(映像制作会社)で13年働いていた私は悲しくなるほど不器用で、コミュニケーション能力が足りず、こうした状況を上手に切り抜けることがまるで出来なかった。

だからこそ考えた。映像ディレクターとして高校ダンス部を取材し、ドキュメンタリー番組に仕上げることに決まった時、踊りを写すだけでなく、その背後にあるチームワークの秘密に迫りたいと。

「日本高校ダンス部選手権」に密着取材

部員数が日本全国で4万人を突破し、女子を中心に大きなムーブメントになっている高校ダンス部──いわゆる「部活ダンス」はひとつの文化と呼べる規模に成長している。そして数ある部活ダンス大会の中で「日本高校ダンス部選手権(通称・ダンススタジアム)」という全国大会を私はドキュメント番組の舞台に選んだ。なぜならこの大会の最大の評価基準が「チームワーク」だったからだ。