教育費は1人だけで年間300万円以上に

その女性によると、「息子が幼稚園の時から、知人に紹介してもらった米国帰りの中国人の先生について習っています。レッスンは週1回50分で1500元(約2万2500円)。先生はアメリカのニューヨーク大学に音楽留学していたことがある方。有名人ではないけれど、教え方が上手だと評判なので、この先生にお願いしました。だから、これくらいお金がかかるのは仕方がないかな、と思います」という。

オーケストラで集中力を高めて練習している若いヴァイオリニスト
写真=iStock.com/Chachawal Prapai
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まるで音楽高校や音楽大学を受験するようなお金のかけ方だが、その女性によると、将来、息子をヴァイオリニストにしたくて習わせているわけではないという。

「息子がどんな職業に就くかは分からないけれど、幼稚園の時から音感がとてもよく、音楽に興味を示していたので、息子と相談してヴァイオリンを習わせることにしました。たとえ音楽方面に進まなくても、いつか息子の役に立つと思っています。まだ小さいので、今は4000元(約6万円)くらいの安いヴァイオリンを使っていますが、上達したら、もっといい楽器を買ってあげたいと思っています」

昨年は新型コロナの影響でリモートレッスンになった時期があったが、今ではまた対面レッスンに戻っている。この家庭の場合も、もちろん英語や算数などの学習塾にも通わせており、教育費は1人だけで年間300万円以上になるそうだ。

プロ並みの先生を揃え、組織的な経営が多い

もはや日本の富裕層の水準に近いお金のかけ方だが、日本と違うと感じるのは、先生の経歴や、親たちの習い事に対する意識だ。日本(といっても地域差や年齢差が大きいので、ひとくくりにはできないが)では1970~1990年代後半くらいまで、ピアノや書道、算盤などを子どもに習わせる家庭が多く、私の個人的な印象では、かつてはバレエやヴァイオリン、チェロなど一部の習い事を除いて、それほど高額なものではなかった。

先生も音楽大学を卒業後、自宅の一室でピアノ教室を開いている人だったり、書道歴や算盤歴20年の人だったりと、他人の子どもを指導するのに十分な経歴ではあるものの、それら一本で活躍している人は多くなかったと思う。むろん、全国チェーンの音楽教室などもあるが、個人経営も数多くあった。