2016年の法改正で、介護する人への支援内容が大幅に拡充

「最期ぐらい精いっぱい親孝行をしたい」と、盛大な葬儀を行い、お墓も建てました。その費用は合わせて850万円にのぼります。その後、同居の母に認知症の症状が出始め、Q夫さんが知らないところで、訪問販売やテレビショッピングで布団やネックレスといった高額な商品を買い込んでいたことが発覚、Q夫さんが支払いを立て替えるアクシデントもありました。

再就職先でもトラブルが続きました。知り合いの紹介で再就職しても、給料は前職の半分程度です。貯金を取り崩す生活を送り、母が他界した後、葬儀を行ったところでついに貯金が底をついてしまったのです。

一方、同じく「ガンの父の最期を看取りたい」と思った冒頭のP子さんは、「父の面倒をみたいので会社を辞めたい」と上司に告げたとき、上司から「介護休業制度を使ってしばらく休んだら」とすすめられました。

1992年、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)が施行され、この法律で定められている「介護と仕事を両立させるための支援制度」として「介護休業」と「介護休暇」が盛り込まれました。2016年には、介護離職者数の増加を受けて大きな法改正が行われて、支援内容が大幅に拡充されています。

老人の手をとる介護者の手
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1.介護休暇

介護休暇は、病気やケガ、高齢などの理由で要介護状態になった家族を介護する従業員に対して与えられる休暇です。介護をともなう休暇の申し出には、有給休暇ではなく介護休暇で対応することになります。

〈取得できる日数〉
要介護状態にある対象家族1人につき、年間最大5日(対象家族が2人以上の場合は10日)取得できます。排泄・食事介助などの直接的な介護や、買い物や書類の手続きを行う場合などにも利用できます。2021年1月1日からは、介護休暇を1日単位、または時間単位で取得することができるようになりました。
ただし、「日々雇用」の従業員、労使協定を締結している場合に対象外となる人は取得できないので確認しましょう。

〈介護休暇を取得できる対象者〉
介護休暇は、正社員をはじめアルバイトやパート、派遣社員や契約社員も取得できます。ただし、「入社6カ月未満」「1週間の所定労働日数が2日以下」の従業員は、労使協定で対象外になることもあります。

〈取得申し出の方法と給料〉
介護休暇の申し出は、「書面による方法」とは限定されていません。有給休暇の取得時と同じ手続きなど会社によって定められているので、規約で確認をしておく必要があります。また、急遽、取得せざるをえない状況も考えられるため、当日の電話による申し出、事後における申し出もできるかどうか確認しましょう。また、有給・無給については、法的に定めはないので会社によって異なります。