「自分が客なら」という視点で「おまかせ」の値段を決める

一流寿司屋では、その日最高の魚を仕込み、つまみから握りまでの一通りのコースを大将に委ねる「おまかせ」を頼むことが主流で、価格帯は「2万円」「3万円」がスタンダードです。超高価格帯でも予約が絶えない店が続々と登場する現象は「寿司バブル」とも呼ばれているほどです。

高級寿司屋の外観
撮影=寿司リーマン
味はもちろん、店の外観や内観など、「空間」も大切な要素だ。

なぜ、一流の寿司屋はこんなにも超高価格帯なのか。その内訳はどうなっているのでしょうか?

私が仲良くさせていただいている、北海道の一流寿司屋の大将、42歳の高田さん(仮名)に、「寿司屋とお金」の話を聞いてみました。他のお客さんが帰った後、彼は「寿司屋のリアル」について語ってくれました。

【寿司リーマン】(以下、寿司)聞きにくい話なのですが、今日は「寿司屋とお金」の話を聞かせてください。

【高田大将】(以下、大将)グレーなところを聞いてくるなあ(笑)。

生米の入ったグラス2つとわさび数本
撮影=寿司リーマン
お客さんが帰った後、大将との「アフタートーク」でこだわりを聞かせてもらうことも多い。

【寿司】すみません! 早速なのですが、寿司屋のおまかせってなんであんなに高いのでしょうか? おまかせの金額ってどうやって決めているんですか?

【大将】一流寿司屋が高いのは、市場で良い魚を選びに選んでいるというシンプルな理由だよ。あとは、キャバクラみたいに「見栄の商売」でもあるから、意図的に高く設定しているという部分もある。おまかせの値段の決め方は、いろいろな人がいると思うけど、俺は「自分がお客さんだったらこれくらいの値段ならギリギリ許せる」という観点で決めた。あとは、地元のお客さんにも来てもらいたいから、極端に高すぎないラインを考えて、うちは1.5万円にしたよ。

【寿司】大将の場合は、「お客さん目線に立って、自分が許せる価格帯でまずコースの値段を決める」というやり方で価格設定されたんですね。

【大将】そう。いい魚を仕入れようとしたら値段にキリがないから、まず1.5万円という価格を決めて、その中でなるべくうまい魚を仕入れているんだよ。

握り1貫
撮影=寿司リーマン
いいネタをさらにうまくするための「技術」には職人の想いが込められている。

なぜ寿司屋の寿司には値段が書いていないのか

【寿司】「おまかせ」は値段が決まっているので安心ですが、追加の握りは値段が書いていないのが一般的ですよね。注文するときに少しドキドキしてしまうのですが……(笑)。

【大将】握りの値段が書いてないのは、市場の魚の値段が毎日違う「時価」だからだよ。ただでさえ仕込みで忙しいのに、寿司屋で毎日メニューの値段を差し替えていたらキリがないよね。だから初めからメニューがないんだ。あと、値段を書かないことで「ちょっと敷居が高いんだぞ」と示したい、という理由もあるかもね。さっきも言ったけど、お寿司屋さんって、見栄の商売みたいなところがあるから。

【寿司】なるほど! ちなみに、お客さんの足元を見て値段を決めることはあるんですか?

【大将】一部にはそういった悪習もあると聞くよ。お金を持っていそうな人からは多く取る、いわゆる「ぼったくり」だ。それから、迷惑だったり面倒くさいお客さんには高い請求をして、もう来させないようにするお店もあるみたいだよ。

【寿司】直接注意せずに、「値段を見て察しろ」とするのもある意味“粋”なんですかね。