過去30年間の「不都合な事実」から目を逸らすな

地球環境の悪化は、18世紀の産業革命以降じわじわと進んできましたが、急速に悪化し始めたのは1970年代以降のことであり、わずかここ50年間のことにすぎません。

しかし、だからといって50年前の生活様式に戻すべきだとか、まして産業革命以前に戻すべきだと主張するつもりはありません。ただ、エネルギー多消費型の生活様式を変えない限り温室効果ガスを減らせないという、過去30年間の事実から目を逸らさないでほしいと願っています。

夜の時間帯に起こった森林火災
写真=iStock.com/mack2happy
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私たちのような環境NPOのみならず、心ある政治家、経済人、有識者も、これまで機会あるごとに「環境の危機」を訴えてきました。しかし、その声は広く国民に届くことはありませんでした。いや、ある範囲までには届いていたと思いますが、国民全体の生活様式や行動を変えるまでには至りませんでした。「不都合な事実」は、私たちを含むそうした人たちのパワー不足の結果でもあったことを認めざるを得ないと思っています。

毎年のように世界を襲う「何十年に一度」の大災害

環境の危機は、異常気象などの気候危機だけではありません。いや気候危機だけに限っても、日本国内では今年7月の梅雨前線の停滞による豪雨で九州の球磨川が氾濫するなど、熊本県南部地域を中心として犠牲者は60人を超えました。

2019年9月の台風15号(房総半島台風)では千葉県各地で電柱が倒壊するなどして死者3名、同年10月の台風19号(東日本台風)およびその関連豪雨では長野県の千曲川が氾濫するなど全国140カ所で浸水が発生し、死者は107人を数えました。

世界を見渡せば、今年のカリフォルニアの山火事、アフリカ東部を中心に大発生したサバクトビバッタの穀物被害、昨年はオーストラリアでも大規模な山火事がありました。もちろん、われわれがニュース報道で知ることのできない気候変動を原因とした被害が世界各地で起こっているに違いありません。「何十年に一度」といわれるような大災害が、じつは毎年のように日本や世界を襲っているのです。