世界屈指の心臓外科医で、「上皇陛下の執刀医」として知られる天野篤医師。自身こよなくゴルフを愛する天野氏は、ゴルフ場でプレー中に心臓疾患による突然死が多いことに警鐘を鳴らし、特にリスクが高いのは「1番ホールのドライバー」と「1.5メートルのパット」だと指摘します。ゴルファー必見、安心・健康にゴルフを楽しむコツを名医が紹介します。

※本稿は、天野篤『若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方』(講談社ビーシー/講談社)、『100年を生きる 心臓との付き合い方』(講談社ビーシー)の一部を再編集したものです。

ゴルフでの突然死は年間200人?

気温がだいぶ下がってきましたが、本来、秋は気持ちよくゴルフができる季節です。

私は、自分が心臓の手術を行って元気になった患者さんたちと定期的にゴルフをしています。一緒にラウンドすることで、その患者さんがどれだけ回復したのかを確認することができますし、なにより気心の知れた仲間のサークルのような感覚で楽しんでいます。

ゴルファーの目線でパター
写真=iStock.com/Uisup
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一般的に、ゴルフは心臓に大きな負担がかかるスポーツだといわれています。ある調査によると、プレーしている最中に突然死した人は年間200人前後と推計されています。とりわけ「40歳以上」で突然死を起こしたスポーツはゴルフが圧倒的に多く、原因は心筋梗塞などの心臓疾患が80%以上を占めていました。

生活習慣病や肥満、喫煙でリスク上昇

この数字だけを見ると、ゴルフは危険なスポーツだと思われるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。

中高年になると、高血圧症、糖尿病、高LDL(悪玉)コレステロール血症といった生活習慣病を抱え、突然死を招くリスクの高い人が増えていきます。ゴルフは、そうした中高年世代の人口が多いので、それだけ相対的に突然死するケースが増えるということでしょう。

とはいえ、ゴルフのプレー中、心臓に負担がかかる場面があるスポーツであることもまた事実です。心臓疾患を抱えている人だけでなく、高血圧、高血糖、高LDLコレステロールに加えて、肥満や喫煙といった心臓病のリスク因子を多く抱えている人は常に注意が必要です。