「寒い家」に住むグループは、たった2年で脳機能が低下

長年梼原町の脳ドックを解析している内田脳神経外科の内田泰史医師は「暖かい家にいることで背筋が伸び、動きやすい姿勢になる。よく動くことで筋力が鍛えられ、活動することで脳の前頭前野の部分が活発になる」と説明してくれました。

脳の前頭前野とは、人の意欲の根源である場所。認知症初期には「物忘れ」が増えますが、これは前頭前野の働きが悪くなることから始まるのです。楽しみでやっていたこと、趣味などに興味がわかなくなるのが、脳の衰えの一歩というわけですね。

戸梶さんは71歳ということですが、少なくとも10歳以上若く見えました。内田泰史医師によると「見た目」と「脳の若さ」も関係あるそうです。暖かい家に住む→体が動きやすい→動くことで脳が刺激を受け、さらに活動の意欲がわく→脳神経が若くなる、というよい循環なのでしょう。

実際に伊香賀俊治教授の脳検査では、戸梶さんの血管年齢は50代だったといいますから驚きです。2年前と現在で「脳の状態」を比較する検査でも、戸梶さんを含む「暖かい家」に住むグループは、高齢にもかかわらず、脳機能が2年前と同等に維持されていました。一方、「寒い家」に住むグループは、たった2年で脳の機能低下が認められていたのです。

不眠に悩んだ時期があったが、今はあっという間に眠れる

前の家とほぼ同じ場所に建つ戸梶さん宅ですが、質のいい断熱材を使用しているため、現在の美容室や住居はかつてより圧倒的に保温性に優れているというのです。

断熱とは、冬は外に逃げていく熱を、夏は内側へ入ってくる熱を断つこと。壁や床などに熱を通しにくい素材の断熱材を詰める手法で、その「質と厚み」により住宅の断熱レベルが変わります。断熱が貧弱だと、冬は室内から外へと大量に熱が逃げてしまうんですね。

起き抜けにベッドに座り、痛む腰を押さえる女性
写真=iStock.com/PixelsEffect
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一方で、昨年末に新築住宅を建てたという大㟢和江さんは「私は脳年齢の結果が悪かった」と肩を落としていました。最新性能の住宅で暮らし、どんなに検査結果がいいだろうと期待していたのに、実年齢を上回っていたそうです。

星旦二医師は「住まいを暖かくする対策をしても、それが数値として表れるには5~10年かかる」とみています。

「ですが、風邪をひかなくなったり、よく眠れるようになるなど、すぐに効果を感じることもあるはず。最新住宅ではアレルギー症状が治まったり、血圧も安定するでしょう」

その通り、梼原町内で断熱改修工事をした人には頭痛や肩こりが改善したという声がありました。大崎さんも“熟睡感”が違うと話します。

「古い家に住んでいた時、主人は不眠に悩んだ時期があったんです。今は二人ともあっという間に眠りにつきますよ。以前はお風呂から出ると寒くて早く洋服を着なきゃと思いましたが、今は脱衣所でもゆったり身支度ができる。窓も結露しなくなったし、家にいることが快適になりました」