ここで触媒の5つの特徴を紹介しましょう。1つ目は無意識にやってしまう中毒性をもたらすこと。スイッチが押されることで、「またやりたい」という気持ちが自然と湧き上がることになります。2つ目は前出の通り、直感的、感情的な判断をする動物的な脳を刺激すること。

3つ目は行動の最中に感じさせること。行動するたびに、商品そのものや使用シーンに組み込まれた演出を味わい、徐々にそれがクセになり、習慣化に繋がっていくのです。

4つ目は報酬を感じやすいこと。歯磨きという身近な例で説明しましょう。歯磨きの報酬は「歯がきれいになる」「歯が健康になる」などが挙げられますが、その状態になるまでには時間を要します。歯磨きを1回しただけでは、美しく健やかな歯は手に入りません。そのため、日々の歯磨き習慣で報酬を感じやすくするための触媒として、「ミント」のような刺激的な要素が含まれているのです。

5つ目は1つよりも複数組み込むと強くなること。ロングセラー商品を分析すると、単一ではなく複数の触媒が組み込まれているケースが多いです。先の歯磨き粉の例でいうと、ミントのほか、泡立ちの良さ、いい塩梅の粘り、クリーンな印象をもたらす白色など、五感に訴えかけるような複数の触媒を盛り込み、「これからも使い続けたい」と思わせる設計にしています。

歯磨き粉のミントの例から、動物脳を刺激すると習慣化しやすいことがわかります。ほかにもわかりやすい触媒の例としては、シャンプーの「泡」や育毛トニックの「清涼感」、エナジードリンクの「濃い液色」、高級車の扉が閉まるときの「静かな音」などが挙げられます。

電子決済の「ピッ」も触媒の1つ

触媒は広告の領域だけでなく、幅広い仕事に応用することができます。触媒を生み出す方法は大きく5つあり、図は特に出現しやすい触媒を整理してまとめたものです。

触媒…理屈を超えて本能的にグッとくる演出

「快楽」「不快解消」の習慣に関係するのは、前出の「ミント型」のように、歯磨き粉のミントのような強い刺激を与えるものと、シャンプーの泡のような心地よさを与える「コンフォート型」があります。

「成長」の習慣に関与するのは「ダム型」です。成長を数値などで「見える化」して、実感できるようにします。家計簿アプリの「資産総額グラフ」やランニングアプリの「総距離数グラフ」などは、イメージしやすい例ではないでしょうか。

「不満解消」の習慣に関係するのは2つあります。1つ目は「セレモニー型」。儀式を通じて過去の記憶・快感を思い出させるものです。例えば、加熱式電子タバコの「一連の吸う行為」やハイボールの「ジョッキで乾杯」、デジタルカメラの「ファインダーを覗き込みながらの撮影」などが該当します。2つ目は「アナログ化型」。デジタルで失った「実感」を、あえてアナログにして体験するものです。スマホの「電池残量」や電子決済の「ピッ音」などが具体例です。