「資本主義4.0」を日本は受け入れやすい

「資本主義4.0」に向けた胎動は着実に生じている。

第1に、最近のマイナス金利は世界中でお金が余っていることを意味している。つまり、従来と比べて、「資本(お金)」の価値が大幅に低下しているのである。

第2に、人工知能(AI)の発達も、資本主義に大きな変化をもたらすことになるだろう。単純労働の多くが人工知能によって置き換えられることになれば、企業の付加価値の源泉は間違いなく労働者の対人関係能力や創造性、価値判断能力などに移行するからである。こうした新たな資本主義の枠組みの下で、伝統的に従業員を大切にしてきた日本企業は、再度フロントランナーへと躍り出る潜在能力を秘めている。

そもそも日本と西洋とでは、宗教・文化・哲学の違いを背景に、労働観や資本主義の観念も大きく異なっている。

西洋の宗教は一神教で、哲学もデカルトに代表されるように、主客二元論で論理的である。あえて誤解を恐れずに言えば、キリスト教の「原罪」の影響で労働はもともと「苦役」だった。エリート主義・事実上の身分制を是認する考え方から、専門的・スペシャリスト的な職種制を採用し、これはグローバル資本主義――すなわち「資本主義3.0」と親和的であった。

これに対して、日本の宗教は多神教で非常に平等な社会だ。西田幾多郎の哲学に代表されるように、主客一体で実践的な性格を持つ。例えば、天皇陛下自らが田植えや植樹をなさるように、労働は「神事」とされる。また、「天岩戸」の神話で八百万の神が対応を協議したように、協力と熟議の伝統がある。すなわち、日本の労働市場はエリート主義的な職種制ではなく、現場主義でゼネラリスト的な傾向がある。この仕組みは、各人が創造性を発揮することが期待される、ポストコロナの時代の資本主義(「資本主義4.0」)と親和的だといえる。